第25章 果たされる呪い

◆ミドルシーン5 〜果たされる呪い〜
GM:君たちの眼前に倒れているペレリウス。まだ息はあるが、その身は確実な致命傷を負っている。
もうじき彼が死ぬであろう事はすぐに理解できる。

セレナス:「ペレ子…」

フィリア:剣を振って血振りをし、鞘に収める。
眼帯は……ポケットに入れるだけで、付けない。

イオス:キャラセリフでペレ子言うなよ。

セレナス:HAHAHA!

GM(ペレリウス):「……ふ…ふふ……」
だが不意に「……あ…はっはっはっはっ…はっはっはっ…!」
と倒れたままのペレリウスが乾いた笑い声をあげる。
「…本当に…ご苦労様…だったね…君達は……。
…これ…で…君たちの『死』は…『完全』に…なった……」

イオス:今、嫌な想像が頭をよぎった。たぶん当たってる。

GM(ペレリウス):「ふっふっふっ…僕は……『役割』を…果たした……」
そう言ってペレリウスは自ら背中の服を破く。
そこにあったのは―――イオスの腕にある真紅の刻印“贄”の刻印だった。

イオス:だよなぁ!あるよなぁ!

セレナス:うは、やっぱか(笑)

GM(ペレリウス):「…死の刻印による贄の選別は…その時代に生きるあらゆる生命に対して
例外なく行なわれる…。そう、それは…僕達…魔族も…例外では…ない……。
…はっはっはっ…、笑えるだろう…僕も君と同じ…あいつに捧げられるための…
『餌』に…過ぎなかったんだよ…」
他者を弄び下等な玩具として見下していたペレリウス。しかし実際は、その彼自身も
死の王に取っての玩具、餌にしか過ぎなかった。

フィリア:「それがお前の『絶望』か?
その『絶望』を『希望』に変えた男がお前の目の前にいるぞ」

GM(ペレリウス):「ふふっ……生憎…僕は『絶望』そのもの……だよ。希望になんか興味は無い。
なりたいとも思わない…」 言ってペレリウスは倒れたままの状態でイオスを見る。
「これで…残る“贄”の刻印は……お前だけだよ。イオス…。僕の力はレオードへと…向かう…」

イオス:「奴がどれだけ強くなろうと、俺はその歩みを止めない。
隣を歩いてくれるお人よしがいるからな」

GM(セクエンツィア):「イオスさん…」
と君の隣りにいるセクエンツィアは君の名を呼ぶ。

「…下らない…。僕達、魔族は絶望と欲望の具現。この世界に存在してはいけない異端の存在。
決して世界に認められることはない存在。ならばその存在らしく僕達を疎む世界を滅ぼしてやるだけだ」

言ってペレリウスの体が崩壊を始める。だが彼は最後までその顔に狂気の笑みを浮かべながら

「…フフッ……これで…奴の…最後に残っていた“人間性”も全て消える…。
レオードは……神祖の魔王アルトサウディウス様以来の“完全なる魔”と…なる…ッ!」

「…こんな…くだらない世界なんか…全て…なくなってしまえ…ッ…」

「全て……す…べ………――――」

その最後の一言と共にペレリウスの背中にあった“贄”の刻印が――消えた。

イオス:「…やかましい」 そう、呟くように言う。

GM:ペレリウスの背にあった刻印が消えると同時に彼の体は消滅し
それはそのまま巨大な光の柱となり天へと昇っていく。
それは『天への柱(ヘブンズ・ピラー)』と呼ばれる魔族消滅時の現象だ。
Gこのテラストを包むほど巨大な光の柱となり、それは天へと消えていった。
光が収まった後、ペレリウスが倒れていた場所には何もなかった。

セレナス:ペレリウス…。

GM:「…終わったのか。イオス=ヴァルムオンドよ」
と君達の後ろから国王とレセリアの姿が。

イオス:「ええ、何とか」

GM(レセリア):「さすがイオス君ね。フローリアが君を好きになるのも分かるわ」
そう笑顔を浮かべるレセリアと王達。
だがその時、君達の上空からぱちぱちぱちと拍手の音が聞こえる。

「さすがだな、イオス。まさかあのペレリウスまで倒すとは、やるじゃねーか」

イオス:やっぱりか。上空から拍手なんてお前かペレ子しかやらねぇ。
「覗きはお前の十八番だったな。相変わらず見事だ」

GM:見ると二階の大きな広間から君たちを見るようにイクフォードとその隣にはアドルがいた。
「ははは、まぁ確かに女相手に対してはその辺は完璧だと自負してるけどよー」

イオス:って、ペレ子死んだらテナ助ける方法わからないんじゃ…。

フィリア:…てっきり分かってて聞かなかったのかと。

GM:まぁ、その件に関しては後々で(笑)。
「さーてと、今日、俺達が来たのはお前たちにメッセージを伝えるためだ。
まあ、いわゆるメッセンジャーってやつだよ」
と、そのイクフォードの台詞を継ぐように隣にいたアドルが続ける。
「…明日、この国に対し死の王が誇る北の魔族軍が全てが進行を開始する。
それは我々の全勢力全てを掛けた完全なる蹂躙の開始だ。
今までのような生半可な侵攻と同じと考えない方がいい」
そう言うアドルは以前までのような甘さはなく、ただ強固な意志のみが伝わってきた。

セレナス:「アドルさん…貴方は……」

GM(アドル):「………」 セレナスの呟きに反応しアドルは静かにセレナスの方へ視線を向ける。

フィリア:「……」 アドルを見ようか。

GM:ではセレナスを見つめていたアドルだが、やがてその視線をフィリアへと向ける。
「そして――待たせたな、フィリア。明日、オレはその魔族達の総司令として軍勢を率いてここへ来る。
その時に“決着”をつけてやろう。オレとお前の全てに」

フィリア:「…“一騎打ち”だ。その場で、私とお前の決着をつけよう」

GM(アドル):「…フッ、お前らしい…な」

セレナス:「アドルさん……見ての通り、ペレリウスはもういない。
テナも倒れたままだ。それでも…戦うんだね、僕たちと」

GM(アドル):「…ペレリウスが『役割』があったように…オレにもまだ果たすべき『役割』がある」
真剣な表情でアドルはセレナスを見る。
「明日の戦いでオレはそれを――果たす」

セレナス:「それなら、僕は反対する事はできない。
僕に出来るのは――救われる結末を、目指すだけ」

GM(アドル):「…最初にお前に会った時
未熟と言った言葉は取り消さないといけないようだな。セレナス」
そう、アドルはいつか見せた表情で微笑む。

セレナス:「アドルさん……」

GM(イクフォード):「ま、そう言うわけだ」
と明るい、いつもの軽口のままイクフォードは手をひらひらさせてそう話しを打ち切る。
「待ってるぜ、イオス。幾千幾万という魔族達の先…死の王の居城でお前をよ」

フィリア:イクフォードは覗き見で、アドルは軍団の指揮、ペレ子は遊撃か。

イオス:「いいだろう。もう俺に、何の迷いも無い」

GM:その君の表情を見てどこか嬉しそうにイクフォードは言う。
「…いい目になったな。『呪い』を『希望』に変えたか。
いいぜ、いつも根暗な雰囲気のお前よりそっちの方が似合ってるぜ!ははっ」

イオス:「俺の力じゃない。これは、セクエンツィアのおかげだ」

GM(イクフォード):「そっか。ああ、それとついでに教えておいてやるよ。
セクエンツィアちゃんの記憶、あれはペレリウスが死んだから徐々に戻っていくと思うぜ。安心しな」

イオス:「そうか、正直安心した。やはり思い出は、大切だからな」

GM(イクフォード):「…それじゃあな」 と別れの言葉を告げイクフォードは消える。
そしてまたアドルも「明日の戦い、お前達の全力を賭けて来るがいい」 そう言い残し、消えていく。


これで『四柱(テトラード)』の内、二人を倒した。
残る『四柱』はアドル、そしてイクフォード。
そして、その先に待つ“死の王”レオード=フォン=ヴァルムオンド。

全ての決着は明日――。

それはこれまでにない苛烈なそしてかつてない激闘死闘至闘の幕開け。
それを魂の内で感じならがらも、イオスもフィリアもセレナスもその胸に強い決意を秘め、剣を握る。

明日――全てに決着を付ける。

その想いを強く抱き―――。


◆幕間シーン 〜その温かな一時を〜
『四柱(テトラード)』の一人にしてリーダーでもあるペレリウスを斃したイオス達。
彼らは疲れきった体を癒すべく、国王とその娘レセリアの厚意により
テラスト王国の宮殿の一室にて、それぞれ休んでいる。
明日の決戦。この長きに渡る“死闘”に決着をつけるべく誰もが胸の内に最後の決意を秘めていた。

GM:とりあえずはシーンはイオス君の部屋のシーンから始めます〜。
部屋で休んでいるイオス。そして君の傍にはセクエンツィア。
しかし彼女の胸には未だ真紅の痣がついたままであった。

イオス:だろうなぁ。あれはレオード倒さないとなぁ。

GM(セクエンツィア):「…イオスさん」

イオス:「…どうした?」

GM:セクエンツィアは窓から漏れる月明かりの光を見つめながら君の方へと口を開く。
「やっぱり、明日は行くんですよね?」

イオス:「そうだな」

GM(セクエンツィア):「私は…まだイオスさんとの記憶を完全には取り戻していません。
それでも、あの館でレオード様やイクフォードさんにお世話になった日々は覚えています。
…あの人達と…本当に決着をつけるのですか…?」

イオス:「当然だ。逃げることも目を逸らすことも許されない。
本当はイクフォードを殺し、レオードと刺し違えるつもりだったのだが
君が少しでも俺の記憶を取り戻した今となってはこの計画はおじゃんだ」

GM(セクエンツィア):「…だめですよ。そんな簡単に死ぬなんて言ったら」
そう言ってセクエンツィアは強い眼差しを君の方へと向け、やがて笑顔を浮かべ言う。
「うん!決めました、私!」

イオス:「…?」

GM(セクエンツィア):「じゃあ、私はこれから貴方の生きる理由になります。
貴方へ生きる意味を与えます」

イオス:「そうか…」 そこから言葉を続けようとして、留まり
ベッドから毛布をとってセクエンツィアにかけ、ひょいっとセクエンツィアを抱えて
「少し飛ぼうか」と窓を見て言う。

GM(セクエンツィア):「…え、大丈夫なんですか、イオスさん?!わ、私をかかえて飛んで!」

イオス:「何、飛ぶというほどの距離ではない。それに、こうやったことは初めてではないしな」
窓から飛び出し、上昇して屋根の上まで行くぞい。

GM(セクエンツィア):「…か、かっこいいですね。イオスさん」
微笑を浮かべ彼女は君を見る。

イオス:ふっと微笑み「同じことを君に言われた」

GM(セクエンツィア):「――私もそんな懐かしい感じがしました」

イオス:では屋根の上に腰を下ろし「さて、どこから話そうか」と呟いた後、話し出す。
「俺は、結局生きるつもりも死ぬつもりも無かった。あれだけ多くの命を奪い
多くの人に「死ね」と言われ続けながらもそれを拒み、それでいて最後はレオードと
刺し違えて死ぬつもりだった。俺は、全てを騙し、全てを裏切るつもりだったんだ…」

GM(セクエンツィア):「……死ぬことで罪を償おうとしたんですか?」

イオス:「いいや違う。死んだ者のためでも、ましてや世界のためでもない。
全ての呪いを断ち切ることが目的で、全ての呪いを断ち切った結果俺は存在の意味を失う。
意味が無いから死ぬ、何の価値も無い死だ」

GM(セクエンツィア):「あの、ずっと思っていたんです。
イオスさんの存在は意味の無いものや価値の無いものじゃないですよ。
イオスさんは今、私の隣に居てそこに存在している。ただ、それだけで十分なんじゃないんですか?
命に対して意味や価値を付けること自体が多分、意味の無いことだと思いますから」

イオス:(かなわないな、君には…)
ふうっと息を吐き「…ここからは少し頭の悪い話になるぞ」と念を押す。
「俺は自らの呪いを断ち切ることを自らの存在の理由とした。
邪魔なものは排除し、不必要なものは遠ざけた。幸せになるなどもってのほかだった。それは…」
ここでもう一度息を吐き「それは、俺が心のどこかで…セクエンツィア、君が俺の幸せという
存在そのものなんじゃないかと思っていたからだ」

GM:君のその言葉を聞き終え、セクエンツィアは静かに君の手を握り言う。
「ありがとうございます、イオスさん。でも、だからなんですね。
イオスさんが大事なものを見落としていたのは」
言ってセクエンツィアは先程のイオスの言葉を思い出すように言う。
「イオスさんはさっき呪いを無くし意味をなくした自分の存在は無価値って言いました。
だけど、イオスさんの死は、イオスさんを知る私や、イオスさんの仲間の悲しみです。
私は貴方が死ねば、きっと、ずっと泣き続けます」

イオス:「だろうな。俺は…君の記憶が無くなったとき、ペレリウスへの怒りの中で、どこか喜んでいた。
これで、君が泣くことは無いと…。これで、セクエンツィアは俺の幸せという鎖を断ち切り
一人の人間として生きられると…」

GM(セクエンツィア):「記憶…そうですね。でも、私は記憶よりも今が大事だと思うんです」

イオス:「怖かった…。俺が幸せになればなるほど、君が消えていってしまうんじゃないかと。
そんなことあるはずがないのに、どうしようもなく怖かったんだ…」

GM(セクエンツィア):「…大事な人が出来れば、その人を大切に想えば
その反面の恐怖も自然と生まれますよ。でも、肝心なのはそれをどう受け止めるのか、だと思います」

イオス:「そうだな。ようやく答えが出た」
今までとは違い、どこか晴れ晴れとしたような微笑みで言う。

GM(セクエンツィア):「うん、良かったです。イオスさん」 彼女も微笑む。

イオス:「たとえ、君が俺の幸せであっても、俺が幸せになるほど君が消えていくとしても
それ以上に…俺が君を幸せにすればいい」

GM(セクエンツィア):「――ありがとうございます、イオスさん。
それとイオスさん、明日セレナスさん達にきちんとお礼を言うのがいいと思いますよ。
だって、ずっと一緒にいた『仲間』なんですから」

イオス:「そうだな、だがその前にやることがある」

GM(セクエンツィア):「やる事…ですか?」

イオス:セクエンツィアの目をまっすぐに見て 「セクエンツィア、目を閉じてくれ」

GM(セクエンツィア):「―――はい」

イオス:そして彼女の方にゆっくりと顔を近づけ…首筋からほんの少し血を吸う。

GM(セクエンツィア):「……イオスさん」 彼女は静かに瞳を開ける。
「いいんですか、本当に私で…?」

イオス:その瞳を真っ直ぐに見て「セクエンツィア、君を愛している」静かにそう言う。

「―――はい、私もです」

その日の月明かりは静かに二人を包んでいた。


 
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