◆シーンプレイヤー・メドウ 〜正義の在り所〜
GM:『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』へと侵入を果たした君達、三人。 すでに乗り込んだ時には眼下のエデンは遥か下へと落下していき、 エデンの大地も崩れていくのが見えた。急がなければ、全てが終わる。 そんな焦りを君達全員は抱きながら この『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』の内部を駆けているそんなシーンです。 アルス:相手の狙いが何となくわかるだけに嫌だなぁ…。 GM:正直、この『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』の内部は入り組んだ造りではなく、 あくまで一本道の単調な内部構造。 だから、君達は迷うことなく最深部へと向かうことができたが…その最深部の少し前のフロアだろうか。 今までの通路とは違う天井が大きく開いた空間に君たちは躍り出た。 そこで、君たちは――血の匂いを嗅いだ。 フロアの中心が赤く染まっている。 その赤の中心に倒れているのは――トゥナ。 アルス:「なっ…!」 メドウ:「トゥナ…?」 目の前に倒れているトゥナを一目見てもう長くないと判る。判ってしまった。 「何で……」視界がぶれる。気付くと、膝をついていた。 もう、無理だ。僕はトゥナを守れなかったのか…。 想いが、後悔が押し寄せてくる。自らへの怨嗟に押しつぶされる。 「ごめん…ごめんトゥナ…」 膝をついてうつむいたまま、謝罪の言葉を呟き続ける。 GM(トゥナ):「……メ…ドウ…さん…?」 トゥナは虚ろな瞳で声のした君のほうへ顔を向ける。 メドウ:「トゥナ・・・」よろよろと立ち上がってトゥナの下へと歩く。 「ごめん…僕は…君を守れなかった…」 涙があふれ出る。 GM:トゥナの方へ歩み寄るメドウ。 確かに彼女の身体からは血と共に生気が抜けていっている。 だが、分かる。まだ、助けられると。 メドウ:「!!!」 GM:その傷は致命傷をわずかに反れていた。 今、急いで手当てをすれば…或いは。 レイア:「この傷なら致命傷じゃない」 GM:だが、放っておけば確実に死ぬ傷でもある。 メドウ:どうすればいい…自分には、助ける手段は無いのか…?! 「…アルス!雪羽ならなんとかしてくれるんじゃないのか?!お願いだ!トゥナを助けてやってくれ!!」 懇願するように叫ぶ! アルス:「言われるまでもありません」 『何をしているの。さっさと治して!』 GM:だが、彼女の傷のいくつかは動脈層を打ち抜かれている。 はっきり言って雪羽一人では、間に合わない。 『…ああ、やってる。だがな、俺様の力では限界がある。 こんなに複数に大きな傷を受けていちゃ回復が間にあわねぇ!その前に出血死するぜ…!』 アルス:「出血が多すぎて雪羽だけじゃ間に合わない…!」 メドウ:「何やってるんだ…!お前ならなんとかなるだろ!」 雪羽の方を向き、叫ぶ。――違う。 「トゥナを治すだけだ、出来るはずだ!」 何を言っているんだ、僕は。無茶を言い、駄々をこね、まるで子供じゃないか…! だが、理性が追いつかない。 レイア:この光景、この状況をメドウは見たことがあるな。 メドウ:「お願いだ…頼む、誰か…誰か助けてやってくれ…」 言いながらも、トゥナの傷に応急処置を施していく。 雪羽だけじゃ無理でも、自分が手伝えばなんとかなるのではないか。 エデンを救うなんて事は、完全に頭から抜けている。唯、目の前の人を助ける事しか考えられない! レイア:「…先に行くぞ」 トゥナに治療を施そうとしているメドウを脇に冷静にそう宣言する。 アルス:「まったく、えげつない足止めを考えますね…。 レイアさん、お願いします。三人共ここにいるのは危険です」 GM:目の前の命を助ける選択をするメドウ。 それと反し、先に行くことを決意するレイア。 メドウ:駄目だ。僕の信じていた正義なんて、嘘っぱちだったのか。自嘲し、絶望する。 何が正義だ。何が正しいと信じることだ。目の前の命、たったひとつも救えないのか。 僕にはエデンの大勢の人と、トゥナを天秤にかける事なんて出来ない。 GM:かつて師であったウェルファスがメドウの正義に対し言った言葉。 「君の正義は確かに目の前の人物を救えるだろう。 だが、時としてその選択が大多数の命を奪いかねない事態もある」 GM:その言葉が…君の中に思い出される。 メドウ:その言葉が痛いほど実感できて――唯、震える。 GM(トゥナ):「……メドウ…さん…」 消え入りそうな声でトゥナは君を見て言葉を伝える。 「……私のことは……もう…いいん…です…。…行って……下さい……」 メドウ:「トゥナ…」 悲しみに、顔がゆがむ。 何も言えない。ただ強く握った拳から、血が滴り落ちる。 レイア:「メドウ、お前はどちらか一方しか選べないと思ってるのか?」 メドウ:「…どう言う事…?」 かすれた声で、レイアに聞き返す。 レイア:「正義の味方ってのは、常に第三の道を選ぶものなんだぜ。 どっちも救うんだ。その為に俺達が力を貸してやる」 アルス:「愛は全てを救うものです。私も、どちらも救いたい」 メドウ:「レイアさん…アルスさん…」 二人の仲間をみやり、涙をふく。 嗚呼…僕には、こんなにも心強い味方が居たんじゃないか。 僕ら三人が居れば、エデンも、そして トゥナも――救うことが、出来るのではないか。 レイア:「先に行く」 その言葉はトゥナを見捨てるのではなく、どちらも救うと言う決意の言葉。 ――そう、メドウには昔とは違う『力』がそこにある。 『仲間』という名の『力』が。 GM:ではレイアはメドウ達にその一言を残し、先の通路へとその身を消していった。 アルス:ではトゥナの傷に手をあて<生命授与>を使って自分の生命力をトゥナに与えます。 メドウ:正義を振りかざすだけでは、何も為す事が出来ない。 壁にあたり、くじけてしまう事もあるだろう。 それを乗り越える「仲間」「愛」の力を二人から教わった。 「スペンサーさん…。こんな僕でも、少しは成長出来ましたよ」 亡き憧れの人を想い、トゥナの手当てを続ける。 GM(トゥナ):「……メドウ…さん…」 手当てを続ける君を見て、トゥナはその瞳から一つ粒の涙を流す。 「―――ありがとうございます…」 GM:やがてしばしの時間が経ち、トゥナの出血は止まり傷も大体は収まった。 「もう…大丈夫ですよ。メドウさん」 弱々しくだけど、いつかの笑顔で彼女はそう答えた。 アルス:その後ろでぶおぉっと血を噴いてぱたりと倒れる。 「こんなもん絶対使わないと思ってたのに…。慣れないことはするもんじゃありませんね…」 メドウ:その言葉を聞いて――頷き 微笑む。 「ああ、トゥナ エデンを救ってくるよ」 そう言って立ち上がり、アルスの方に向き 「ありがとうございますアルスさん。愛は無敵、なんですね。ようやく実感できた気がしますよ」 苦笑し、立ち上がるのに手を貸す アルス:「そう言ってもらえると血を噴いた甲斐があるというものです…」 『早く今度は私を治して…』と雪羽に心話で言う。 GM:トゥナ「はい、メドウさん。お願いします」 そう言った後でトゥナはアルスを見る。 「…アルスさん。ウェルファスの支配を打ち破った貴方の事をすごく羨ましく素敵に見えました。 それに私の命を救っていくれて…ありがとうございます」 アルス:「私が何か特別なわけじゃありません。愛の力ってやつですよ。 私にはそれを無尽蔵に注いでくれる女神様がついているというだけです」 GM:その言葉に対しトゥナは笑顔で返した。 そして、君たちは立ち上がり進む。 目指すべき――最後の決戦の場へと。 ◆シーンプレイヤー・シア 〜彼が見い出した存在の理由〜 『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』最深部。 「…スラー…トゥナ…リウ…」 気づくと俺はその三人の名前を口にしていた。 俺と同じこの世の摂理の外から生まれた『禁忌の子(サクリード・チルドレン)』達。 生まれた意味を持たないただの人形の存在。 だが―――。 「お前達は…最後に自分たちの存在の意味を見い出した…」 スラー。ウェルファスによってエデンを内部から崩壊させる駒。 ただ、それだけの為に生み出されたお前が『大切な人』を見つけ そいつを守るという自分の存在を見い出し、ウェルファスの支配の鎖を打ち砕いた。 トゥナ。創られた命であるお前は人としての感情や想いをその胸に持っていた。 その想い故にウェルファスを裏切り、メドウ達と共に人の中に生きることを選んだ。 …そう、最後の瞬間まで。 リウ。かつて人だったお前はその命を懸けて 自分が認めた者と戦い、そしてそいつのためにその命を賭け守り抜いた。 …ならば、俺は……。 「――ごふっ!」 口の中から鉄の味が込み上げて来る。 手のひらには血がこびり付いていた。 命の刻限。 俺はウェルファスに創られた最初の『禁忌の子(サクリード・チルドレン)』 故にその身体に施された技術は未完成の失敗作。この命も…もう僅かしか持たないだろう。 だがそれでも――― 「ウェルファス」 目の前では荘厳な装置に収まった『蒼剣(ジルナード)』へと力を注ぎ込もうとするウェルファスがいる。 『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』の制御装置を限界破壊(オーバーロード)させると奴は言っていた。 だが、今の俺にはそんな事はどうでもいい。 「ここの力を暴走させ、エデンを滅ぼすと言ったな。 その後であいつらとの決着をつけるのか」 そう、俺にとってはエデンの命運やウェルファスの目的よりも それよりも――― 「何をほざいているんだ、出来損ない。そんなことをするわけが無いだろう。 この『不可侵の卵(シークレット・クラウド)』が限界破壊(オーバーロード)を迎えれば ここも爆発し自爆する。奴らもそれで終わりだ。」 「…なるほど、メドウとの決着をつけるつもりは無いという事か」 「分かったのなら、貴様はそこであいつらの足止めを―――」 ひゅん――! 風を斬る一閃の刃。 俺の放った一撃はウェルファスの髪をわずかに斬っただけだった。 奴は瞬時に俺から距離を取っていた。 「…ほぉ」 面白そうに奴は俺を見て笑う。 「驚いたな。いつ、私の制御の鎖を断ち切った?シア」 「…さあな」 俺は手に持った剣を構え、目の前の“敵”へと向かい合う。 「スラーに続き貴様もか…。全く、つくづく出来損ないだな」 「お前にとって俺が何であろうとどうでもいい。だが、俺は俺の存在を果たすためにお前を消す」 地を蹴り、瞬時に間合いを取る。 必殺の一撃、俺の放った剣は奴の心臓へと―― “どすんッ!!” 「―――くっ!」 俺の一撃は―――入らなかった。 眼前に現れた雷の障壁に俺の剣は折れ。 奴の手に生まれた雷鳴の剣は深々と俺の胸へと入っている。 「余興にもならなかったな。消えろ、失敗作」 ウェルファスの冷徹な声…。 身体から抜けていく力と意識…。 「―――――」 だが、その時。 「…………ははっ…」 声が。 「…は、はっはっはっはっ……」 聞こえた。 「何がおかしい?失敗作」 「……死ぬ…からさ。」 「貴様がか?」 「……いいや」 そして俺は宣言した。 「お前の命がだ。ウェルファス」 “――ずばんっ!!!” 「……何…だと…?」 目の前で信じられないと言う表情のウェルファスがいる。 その胸には…。 「馬鹿…な…。なぜだ…なぜ…!なぜ!!『蒼剣(ジルナード)』がああああぁぁぁッ!!!」 蒼き剣。 『蒼剣(ジルナード)』が深々と刺さっていた。 俺はウェルファスの胸に刺さったそれをゆっくり手に取る。 それは俺の手の中で輝きを放つ。 「こんな…事が…!し、失敗作の…貴様が…!!神器に選ばれるなぞ…!そんな…事が……ッ!!」 「お前の過ち…それは―――」 “ずばああああんッ!!” ウェルファスから『蒼剣(ジルナード)』を抜きさる。 奴の身体は二つに両断され、地に落ちる。 「俺という存在を――創った事だ」 静かに『蒼剣(ジルナード)』は俺の手の中で蒼き光を放っていた。 GM:と言うわけでクライマックスいきま〜す! アルス:はーい! レイア:OK。 メドウ:緊張する…! |