◆オープニングシーン3 〜夜に輝く星〜
GM:では恒例の決戦前夜イベントですが、まず先にサクスから行きますね。 サクスさん、君は城の城壁で辺りの風景が一望出来る場所にいた。 夜風が吹く城壁の上で君は不意に背後に人の気配を感じた。 サクス:「…こんな夜更けになんだ?」 振り返りもせずに言います。 GM(ヴァルター):「……以前、オレが復活した時はお前とまともに話せなかったから」 その声に応えるように君は振り返る。そこには予測通りの人物―― かつての君の戦友ヴァルター=オデッサイスがいた。 「恐らくこれがまともに話せる最後の機会だと思った故、出向いた」 サクス:「…よくここまで来れたな。いや、さすがは盟友と言うべきか」 GM:ヴァルターは夜風を受けながら視線を不意に夜空へと移し君へと語る。 「まずは、礼を言っておこう。ベアトリーチェ様の魂を解き放ってくれた事へのな」 サクス:「…主に対する当然の務めだ。あのままにしておくにはあまりに忍びなかった」 GM(ヴァルター):「…18年前とは逆だな。あの時はオレが主のために反旗を翻し そして今はお前が主を救う為に主に刃を向けた。 オレ達には主のために汚名を被ると言う因果律が仕組まれているのかもしれんな」 そう自嘲気味に言い、ヴァルターは視線をサクスに戻す。 「明日、お前達はこの戦いに終止符を打つ為に主要となる戦力を“約束の地”へと向かわせるのだろう」 アルジェント:バレテーラ。 GM(ヴァルター):(安心しろ、俺はそれをクリストファーに言う趣味は持ち合わせてはいない) アルジェント:ありがとう。マジありがとう。 サクス:「…ふん、察しのよさは相変わらずだな。まあお前の事だ、悪いようにはしないだろうな」 GM(ヴァルター):「オレは武人だ。拳を振るう事こそ本懐。それ以外の事に関与するつもりはない」 そこまで言ってヴァルターは不意に自虐的に笑う。 「いや、もはや武人でもないか。望みを果たすためだけに奴らの手を借りた亡者と言ったところだ」 サクス:「ふっ、目的の為に手段を選ぶ必要はない。そうだろう? 18年前もお前はそうして、今回もそうしようとしている。 俺は盟友のその想いに、この体で応えるだけだ」 GM(ヴァルター):「――感謝を述べる、サクス」 言ってヴァルターは振り返る。 「では明日、お前が本拠地に来た時にオレの願いを果たせてもらう。 今度は誰にも一切邪魔はさせない。クリストファーにも、その他の雑兵にも一切な。 お前も万全の身体で来る事だ。 そうでなければ我が身を亡者に変えてまで帰還した意味がなくなるからな」 サクス:「魂は錆付くことなく昔のままなのだろう? ならば魂と魂のぶつかり合いで、お前を斃す。それだけの事だ」 GM:君のその言葉を受け、ヴァルターは笑みを浮かべた。 それは18年前、共に盟友であり宿敵であり友であった頃の戦士の笑み。 「無論。18年前の戦いの真の決着。明日、付けよう――」 そう言い終わると同時にヴァルターの姿は夜の闇に消えた。 君の中では18年前の彼との戦いを思い出し、高鳴りを覚えずにはいられなかった。 サクス:「…ふん、あいつもいつの間にかコソコソそするのが上手になったものだ」 そうしてサクスもまたこの場を後にした。 明日の戦いは恐らく、君の中で史上最高の戦いとなるであろうと核心を抱いて――。 GM:フェザード王国女王の私室。そこには君とシアリーがいた。 「いよいよ、明日だね。アルジェント」 アルジェント:「はい。すみません、シアリー様。 本当は二度とあなたに女王の重荷など背負わせるはずではなかったのに…」 GM(シアリー):「え、何言ってるんだよ〜、アルジェント。 私は女王の席を重荷だなんて思った事は一度もないよ」 アルジェント:「それでも、兵士たちがあなたの名を叫んで死ぬことに… 心を痛めなかったはずはないでしょう?」 GM(シアリー):「それはそうだけど…。私はそうしないためにも女王になりたいと思ったの。 早期に戦いを終結させて、平和な時代を長く維持できるようするのが私の願いだったから」 アルジェント:「やはり強いですね、あなたは。俺は到底耐えることなどできなかった…」 そして一拍間を置き。 「シアリー様、これから俺が今まで何をしようとしてきて、そしてできなかったのかを話します」 GM(シアリー):「アルジェント……うん、いいよ。話して」 アルジェント:「俺は、あなたに拾われて、レストと、そしてあなたのいる暮らしの中にいて 安らぎを感じていました。あの日々は俺にとってかけがえのないものでした。だけど、俺は そんな日々の中である日気づいてしまったんです。俺の中にある、あなたに対する想いに…」 GM(シアリー):「私に対する?」 アルジェント:「はい、俺は…アルジェント=セントヘレンは シアリー様…あなたを愛してしまっていた」 GM(シアリー):「え?!え?!そ、そうだったの?!」 気づいていなかったらしくちょっと驚くシアリー様。 アルジェント:「この想いに気づいた時、俺の中に生まれたもの…それは恐怖でした。 俺はこの愛情を与え続ける、どれほど表面ではそんな素振りがないように振舞っても あなたのためなら何だってする。どれほど俺に与えられるものなど何も無いと自分に言い聞かせても 俺はこの愛情を与え続けてしまう…。そしていつかその対価は、あなたに降りかかる」 GM(シアリー):「…対価?」 アルジェント:「はい。俺が与えただけ、俺はあなたから奪ってしまう。 俺のその恐怖は、現実のものとなりました。 俺は、あなたからフェザード王国もあの安らぎの日々も何もかも奪ってしまった。 俺を眠りの皇帝にするために、フェザード王国は滅ぼされたのだから。 …あなたからすべてを奪ったのは、俺なんです」 GM(シアリー):「それは違うよ、アルジェント! あれはアルジェントのせいってわけじゃないよ。それはアルジェントも分かってるはずだよ」 アルジェント:「結果的にはあれはクリストファーが ヴェルトハイムの目的のために行ったことですが、その時の俺はそうは思いませんでした。 そして、これ以上奪わないために一つの決意をしました。 …俺のこの愛情が止められないのならば、俺の価値の方をゼロにすればいいと」 GM(シアリー):「アルジェントの価値をゼロに…?それってどう言うこと?」 アルジェント:「つまり、俺を誰からも必要とされない存在にするということです。 そのために俺は、ラインを裏切り、ディゼルもあの場に残し そして…レストを殺すことであなたも裏切ろうとした」 GM(シアリー):「そっか、そう言う事を考えてアルジェントはあんな行動したんだね」 アルジェント:「はい。しかし結果としてそれは失敗に終わりました。 あのとき、あの宿屋であなたから言われたたった一言の言葉で」 GM(シアリー):「え?私の一言」 アルジェント:「あなたはあのとき「自分がやった行動の結果にはそれに伴う責任をしないと」と言った。 その時、俺はラインが何を考えていたかに気づいたのですが、同時に俺がしなければいけないことは 俺があなたから奪ったものの責任は、こんな方法で償うべきものじゃないのではないかと思ったのです。 俺のすべきことは、俺の空の星を摘み取ることでも、あなたからレストを奪うことでもないと」 GM:君のその言葉を聞いたシアリーは深い感情を交えた瞳で君を見、その先の答えを待つ。 アルジェント:「俺の役目は、あなたの空を覆う暗雲を切り裂くことだと。 たとえ俺があなたの空の星になれなくとも、ただ雲を飛ばし、 星を輝かせるだけの風でよいと俺は思いました。 そして、そのため俺はレストを生かすつもりだった…。だけどそれは叶わなかった。 生きるはずの者が死に、死ぬはずの者が生きた」 GM(シアリー):「アルジェント……」 シアリーは深い感情を込めて君の名を呟いた。 アルジェント:「シアリー様、ここからは知ったところで誰も幸せになんかならない話です。 なので、聞きたくなくなったら言ってください」 GM(シアリー):「ううん。そんな事無いよ。幸せになると不幸せとかそんな打算とか関係なく 今はただアルジェントの事が知りたいよ。私が知らなかった君を。 君が何を考えて戦って生きてきたかを」 アルジェント:「シアリー様、今俺は記憶がほぼ戻ってきています。 そしてそれにともない、今俺の中には…『記憶を失う前の僕』と『記憶を失った後の俺』がいます」 GM(シアリー):「記憶が…」 アルジェント:「そして記憶が完全に戻ったとき、どちらかが消えます」 GM(シアリー):「そうなんだ…。アルジェントは記憶を完全に取り戻したいと思う?」 アルジェント:「…俺がどう思っても、俺はいずれ全ての記憶を取り戻すでしょう。 そして、どちらが消えるべきかは明白です。再びラインを裏切る危険性を孕み あなたにはた迷惑な愛情を与え続ける『今の俺』こそが、消えるべきです」 GM(シアリー):「それじゃあ…記憶を失った後の今の君、レストが想いを託して 私が信頼を寄せた君も消える事になるよ」 アルジェント:「…これが最善の手段なんです。ラインやアヴェスター教会の騎士たちに 頼られている僕を生かして、災厄しか振り撒かない俺を殺すことが、誰も悲しまない方法なんです」 GM(シアリー):「そんな事ないよ。少なくとも今のアルジェントが消えたら私は悲しむよ。 理由がどうあっても君は私のために私を生かしてくれるために全てを捨ててくれた。 私にとっても君は恩人だし、大切な人だよ。 それに起こるかもしれないっていう予測だけで消していいような人なんていちゃだめだよ」 アルジェント:「…何故ですか…。俺が生きる限り…あなたはこの欲しくもない愛情を 与え続けられるというのに…」 GM(シアリー):「え、だって、人から好意を寄せられて嫌がる人はそんなにいないと思うよ。 少なくとも私はアルジェントから愛情を与えられる事はすごく嬉しいし。たぶん、アルジェントは 素直に愛情を表現する方法が無いから、そういう回った仕方をしただけだと思うよ」 アルジェント:「また…俺はあなたから何かを奪うかもしれませんよ…」 GM(シアリー):「じゃあ、その時はハッキリとアルジェントの事を叱ってあげるよ。 間違っても道は何度でも正せるから」 アルジェント:「はぁ…本当はここでどちらの俺を消すかの決定権を持っているあなたに 今の俺を消させるつもりだったのですが…やはり俺ではあなたには敵わないようです」 溜息をひとつついて言う。 GM(シアリー):「アルジェントは色々難しく考えすぎだよー。 道はいくつもあるはずだから、その中から探り探りでいいから 一番いい道に行けるよう努力すればいいんだから」 アルジェント:「そうですね、あなたの命令とあらば仕方ありません。 どちらの俺も生かせるようにしてみましょう。…それにもしかしたら… それこそが星に手を届かせる方法かもしれない」 最後の方は呟くように言う。 GM(シアリー):「うん!そうだよ〜!だからこれからも一緒によろしくだよ〜!アルジェント〜!」 君の手を取りシアリーは微笑む。 アルジェント:「はい。シアリー様、あなたの空に輝きがありますように。 …そして願わくば、その中に銀の星がひとつあらんことを」 シアリーの手を握り返し、微笑む。 それはシアリーの見た、アルジェントの初めての微笑み。 GM(シアリー):「アルジェントが微笑んだの、始めて見たよ〜」 それに驚くシアリーだったがすぐにいつもの笑顔を浮かべて 「うん、アルジェントは笑ってる方がいいよ」 アルジェント:「そ、そうですか…?あまり慣れないというか小っ恥ずかしいのですが…」 GM(シアリー):「あははは、アルジェント可愛いな〜」 アルジェント:「うぅ…あなたがどっちも生かすなんて言ったからだ」 アルジェントが導き選んだ答え。 それの答えを胸にアルジェントは本当の自分を取り戻す。 そうして、二人の主従はこの日の夜、互いの絆を深めた。 明日に迫った最後の戦いを前に不安は、もう無い―――。 ◆GMシーン 〜アリスという少女〜 その少女は生まれる前から呪われていた。 少女の両親――父と母にあたる二人はごく普通のありふれた幸せな夫婦だった。 だが、ある日、天から一つの果実が落ちた。 それは遥か空にそびえるエデンから落ちた禁断の果実。 そして、その事実を知るのはエデンに君臨する皇帝のみ。 妻はその美しい林檎のような果実を口に含んだ。 それはこの世の何とも比べられないほどの美味を含んだ果実。 だがそれは毒。この世の何にも勝る至高の毒。 ほどなくその妻は亡くなった。だが亡くなる寸前に妻は子供を生んだ。 子の名はアリス。 毒の実を受けた母の胎内にあって、その毒の力を上回り 生まれる前から“禁忌の実の加護”を受けた少女。 【支配の誓い(エンゲージリング)】 それはエデンに伝わる禁忌の実に封じられた王の証。 彼女の血は全て毒で出来ている。 それは人を殺すといった単純な毒ではない。 彼女の血を口に含んだ者は彼女の人形、支配下となる。 幼少の彼女にはそれが分からなかった。 無論、彼女の周りの人物達もそれを知るはずはなかった。 だがアリスの血を受けた父や周りの者達が アリスのちょっとした言葉に従い、彼女の支配に絶対服従をする。 やがてアリスは孤立し、一人となった。 誰もアリスに近寄る事は無い。 いつしか母を殺したのもアリスの血の力だと言われるようになった。 ただ一人。捨てられ、孤立し、寂しさと涙で過ごす。 アリスには友達なんていない。 いるのはただ命令を聞くだけの存在。 そんなある時だった。 「ほぉ、不思議な能力を持つ子供だな」 一人ぼっちのアリスの前に一人の男とそれに付き従う者が現れた。 「名は言えるかい、小さき少女よ」 「…あ、ありす…」 「アリス、か。良い名だ。私はヴェルトハイム=ヴィンテンブルグ。 こんなところで何をしているのだい」 「………」 ヴェルトハイムと名乗った男の問いにアリスは答えない。 そんなアリスの心中を察してか、男は続けて言う。 「捨てられたか。あるいはお前の能力の恐ろしさに周りが離れたか。 どちらにしても今のお前は一人と言う事か」 そう言った瞬間、ヴェルトハイムはその手をアリスへと差し出した。 初めて自分に差し出された手にアリスは驚き、一歩下がる。 「自分自身の能力に恐れるのは恐怖という本能があるからだ。 それは当然の事であり、周りが君の能力に恐れるのも至極当然。 強大すぎる力はいつの世も異端と蔑まれ、恐れられ、最後には排除される」 それはまさに今現在のアリスの置かれた環境を述べるようにヴェルトハイムは続ける。 「だが、なればこそ。異端の力を持つ者はその力を受け入れ制御し 己が生き残ることに最大限有効活用するべきだ。 それは紛れも無く己自身の一部。欲望を満たすために使ったとしても何ら恥じる事は無い」 それはアリスに取っては否定し続けた自分と自分の能力に対する全ての肯定。 アリスは自分の目の前に立つ男をもう一度良く見る。 それは混沌のような深い全てを包む瞳をした者。 この者もまた自分と同じように異端の能力を持ち、それ故に周りから忌避されているのだろうか。 だからこその先程の言葉。 あれは自分だけではなくこの男自身にも言い聞かせているのだろうか。 「お前を拾ってあげよう、アリス。私と一緒に来る気はないか」 そのヴェルトハイムの言葉に反応したのはアリスではなく 傍らに控えていた青髪の青年。 「…ヴェルトハイム様。よろしいのですか」 「よい、私がいいと言っている。 それに私も人の親になってみたいという“欲望”もある。 それに従うのは当然であろう」 その言葉に隣にいた青年もまた納得をしたのか静かに頭を下げる。 「――は、貴方様がそうおっしゃるでしたなら」 差し出された手。 アリスはおそるおそる、その手を取った。 「…お、おとうさん…ってよんでも…いい?」 ヴェルトハイムの手の感触の中でアリスは小さくそう聞いた。 「構わない。私もお前の事は実の娘と思おう、アリスよ」 「――おとうさん…」 ヴェルトハイム=ヴィンテンブルグ。 生まれながらに混沌の異端として生まれた彼は己と同じ境遇にあったアリスを 己の子として拾い育て、彼なりの愛情をアリスへと注いだ。 そこには打算や利用などと言った感情は無い。 ただヴェルトハイムの中にある子を慈しみたいという“欲望” 子を持ちたかったという“欲望”のみ。 幸せだった。 アリスに取っては初めて本当に自分を必要として大切にしてくれた人。 ディゼル:(…ロリコン宣言)ボソ GM(ヴェルトハイム):(殺すぞ) ディゼル:(僕と同じ匂いがすr) GM(ヴェルトハイム):(だから言っただろう。お前と私は似ている) ディゼル:(今ならその言葉の意味がわかるよ!) GM(ヴェルトハイム):(やっと理解したか)ぁ ディゼル:(笑)続けてください(笑) だがある日、それは唐突に奪われた。 三騎士の叛乱とその死亡。 だからこそアリスは誓った。 自分を拾い、本当の父のように優しくしてくれた父・ヴェルトハイムを蘇らせると。 そして、それから18年後。 ヴェルトハイム勢力軍の本拠地・約束の地への扉前にて―― 「………」 アリスは一人、門の前で座っていた。 彼女の腕の中にはウサギの人形が抱えられていた。 「…どうして…」 アリスの問いは自分へ問い掛けたものだった。 18年前から自分の欲しかったものは自分を愛してくれた父・ヴェルトハイムただ一人。 その父の復活のためならあらゆるものを犠牲にして利用にするつもりだったのに。 それなのに、何故あの時…父が復活した時に自分は 利用していたはずのディゼルの方を選んだのだろう。 「どぉして……」 そして、今でも思い出されるのは自分のために一生懸命に戦い続けたディゼルの姿。 最初に会った時も。公国で人質になった時も。 アルジェントやサクスが裏切ってディゼルと自分二人だけになった時も。 あのヴェルトハイムとの戦いの時も。全部自分を助ける為に取り戻してくれる為に戦ってくれた。 「…馬鹿だよぉ…ディゼル…お前は…」 そして、今も彼女の心にあるのは約束の地の向こうへと消えた父ヴェルトハイムの安否ではなく ディゼルの安否であった。 「…正直、貴方がディゼルに対して、そこまで心を開くのは僕の計算外でしたよ」 「!」 顔を上げると彼女の目の前にはクリストファーの姿があった。 「…だったら、何だ。あの時、私がディゼルを選んだから お前は私を殺すのか?」 「まさか、そんな事を僕がするはずがありません。 貴方はヴェルトハイム様が愛する娘です。 あの人が大切にしている者を僕が傷つけるわけがない」 それは紛れも無くこの男の本心であろう。 事実、そうでなければ自分などいつでも殺されていたとアリスは確信している。 「明日、新生フェザードとアルレシオに総攻撃を行ないます。 それによって回収される魂でヴェルトハイム様の完全復活も為され あの方の目的も達成されるでしょう」 「…そうか」 「ディゼルが気になりますか?アリスさん」 「………」 ただ黙って答えるアリスにクリストファーは冷笑を浮かべ言う。 「大丈夫ですよ。彼はきっとやって来ます。貴方を救いに」 その事はアリスも望んでいる事だった。 だけど、そうなればディゼルがどうなるかアリスは知っている。 「楽しみですよ。次に彼と会うのが僕と彼との因縁の決着になるでしょうから。 そして、僕が勝とうとも彼が勝とうとも悲劇的な結末はもう避けられない――」 そう、すでに結末は用意されている。 どんな道を辿ろうともディゼルが行き着く先は一つしかなかった。 それを分かっていてもなおアリスはただもう一度彼の名を呟いた。 「ディゼル…―――」 |