◆オープニング 〜混沌の軍勢〜
――アヴェスター教会 この熱砂の大陸・ムーヴェリアスに存在した大陸の半分を覆った勢力。 だがその勢力はその日、崩壊した。 教皇にして眠りの皇帝ベアトリーチェ。 そしてその息子であり、教会の指導者でもあったライン=セントへレン。 教会のシンボルでもある、その両者が舞台から消えた。 聖十騎士団第十騎士ヴェルトハイム=ヴィンテンブルグの降臨と 第四騎士クリストファーによるアヴェスター教会の掌握と旧残党の殲滅。 そして新たなる勢力の樹立。 “新ヴェルトハイム勢力” アヴェスター教会に存在した多くの信者達はクリストファーと同様に ヴェルトハイムという“混沌”にその心を奪われ、心酔し “彼個人”に対する忠実な信者となり、新勢力の駒となった。 だが信者の全員が掌を返したわけでは無かった。 教会古参の者達の多くは眠りの皇帝ベアトリーチェを慕い それゆえに付き従って来た者達。 その為、彼らは新ヴェルトハイム勢力への傘下を拒み 粛清の対象となり、ある者は逃げ延び、ある者は散り散りとなった。 そうした変動からわずか数週間後―― ――アルレシオ公国領にて 「…うん?あれは、何だ」 それに気づいたのは国境警備隊の兵士の一人だった。 遠くの地平線に見えるのは土煙を上げ、こちらへ向かってくる無数の軍勢。 それは数万に及ぶ大軍勢。 「あれは…ベルー王国の兵か?!」 「いや!それだけじゃない!アヴェスター教会の傘下に入った アーベルド公国の兵も一緒だ!どう言う事だ?!なんであの両国が一緒に?!」 国境を護るアルレシオの砦に向かうその軍勢の兵士達は 己の意志を持たず、ただ命令された人形のように一点を目指す。 その軍勢の中にはシュトルムに殺されたはずのベルー王国の国王の姿もあった。 「………殺せ……殺せ……ヴェルトハイム様のために… 敵を……人間を……殺せ……」 瞳に感情や意志を宿さず、呪言のようにそう呟く。 ベルー王国の国王だけでなく兵士のほとんども同じであった。 恐らく国境警備の兵士達、誰一人が気づかなかったのであろう。 彼ら全員の身体に一本の細い“糸”が繋がっていた事に。 そして、彼ら全員がすでに数日前に殺されていた事に。 砦へ近づき獣のような咆哮をあげ、砦とそこに存在する人間へと襲い掛かる軍勢。 その軍勢の遥か後方には三つの人影存在した。 それは黒の制服に身を包んだ聖十騎士団の追放された二人の騎士と 彼らを呼び戻したヴェルトハイムの腹心。 「さぁ、あの御方のためにもっと多くの血を流してもらいましょう。 この大陸全ての人間をあの御方の目的の為の贄となってもらいましょう――」 クリストファー=ベルナードは至高の笑みを浮かべ、そう呟いた。 新ヴェルトハイム勢力は大陸の半分を覆った状態のまま結成を為し ヴェルトハイムの意志の下、クリストファーによるムーヴェリアスに存在する民への虐殺。 そして、その魂をヴェルトハイムへと捧げる儀式を行なった。 大陸はかつて無いほどの戦乱と血と魂が蔓延る“混沌”の世を辿った。 このまま大陸は最後の一人が死に絶えるまで無限の殺戮が繰り返されるかに見えた――。 だが―――それから半年後。 ムーヴェリアス大陸にて起こった史上最悪の戦いは幕を降ろす。 そして今、その希望がこの地へと帰還を果たす。 ◆オープニングシーン1 〜新生フェザード王国〜 GM:まず最初はアルジェントとサクス二人のOPシーンから行きます。 ディゼルは不在で、ディゼルのOPは後ほどしますので〜(笑) アヴェスター教団総本山での事変より半年。 ムーヴェリアス北東・新生フェザード王国にて――。 アルジェント:おお、そんなことになってるのか。 かつてのフェザード王国領は旧アヴェスター教団によって支配されていた。 しかしヴェルトハイム勢力の結成に伴い、この地には旧教団勢力派の者達が集っていた。 彼らはあくまでもベアトリーチェを主として定め ヴェルトハイムを主と崇め彼らが行う無差別な殺戮に賛同する事が出来ずにいた。 しかし、絶対的数の差や精鋭の違いに瞬く間に彼らは ヴェルトハイム勢力に押さえつけられ、この地にて最後を遂げるはずだった。 だが、そこに現れたのはフェザード王国の国旗を掲げたアルレシオ公国の軍勢。 その軍勢の指揮を取るのは亡きフェザード王国の女王シアリー。 先陣をきるのはフェザード王国最高司令官にして最高栄誉騎士アルジェント=セントへレン。 もともとアルレシオ公国の血筋も引いていたシアリーは王国の奪還と 現在のヴェルトハイム勢力を打倒する為にアルレシオ公国の力を借りるのは道理であり アルレシオ公国側もまた現在の不利な状況を打開するための味方ならば 同盟を組む事に些かの疑問も持たなかった。 シアリー率いるアルレシオ公国の軍勢によって旧フェザード王国領に侵攻していた ヴェルトハイム勢力を撤退させる事に成功。 同時に王国領に残った旧アヴェスター教会の者達はベアトリーチェの実の息子でもある ライン、そしてアルジェントの傘下に入る。 こうしてアルレシオ、旧アヴェスター教会の力により ここに新生フェザード王国は設立した。 ―――そして現在 GM:新生フェザード王国城内・統合作戦会議にて、国の中枢を担う数人が会議に出席していた。 フェザード王国女王シアリー=ハルワーナ。 フェザード王国最高司令官、最高栄誉騎士アルジェント=セントへレン。 フェザード王国第一級騎士長・サクス=一刀。 そして、アルレシオ公国からの協力として同席していた 聖皇騎士団団長ジョシュア=ガーランドと自称ディゼルの保護者ダグラス。 以上の者達が現在の状況について会議を行なっていた。 アルジェント:あ、GM。ちょっといいですか? GM:なんでしょ? アルジェント:ちょっと前から考えていたんですけど ヴェルトハイムに対抗する騎士たちということで『星十騎士団』というものを結成したいのです。 ここのメンバーで。アルジェント、ライン、サクス、ダグラス、ジョシュア、ディゼル レスト、フェティですね。死んだ人も含まれてます。残り二人の人選がまだですが。 GM:おお、なるほど、いいね(笑) じゃあ、フェザード王国第準一級騎士長ザック=イルスパーナ。 こいつを加えれば9人だぜ! アルジェント:おお!…って誰? GM:え?サクスにひっついて驚き役や解説役させようとしたかませキャラだけど?(一同笑) アルジェント:そんな奴がいるとは…。 ディゼル:で、戦うとマジキチで強いんですね(笑) GM:どんなキャラだ、それ(笑) ディゼル:そういう奴に限って強いフラグとか(笑) GM:なるほど、それじゃあ実現してみようか(ぇ) ディゼル:やったー(笑)ワン○ースでいうウソップの立ち位置でお願いします(笑) GM(ザック):「ちくしょう!もうだめだ! いくらオレ達が足掻いても戦力の差がでかすぎるっすよ!もうオレ達は終わりだー!」 と、そんな事を早速わめき散らすザック。 アルジェント:「うろたえるな!それでも闇を照らす星の一員か!」 GM(ザック):「!…し、失礼しました!アルジェント様!」 君のたった一言で落ち着きを取り戻し自分の席に座るザック。 それと入れ違いに思案を巡らせていたジョッシュアが重い口を開く。 「…しかしザック卿の焦りも分かる。現状は我々で戦力の差をカバーできているが このままではジリ貧。いずれは我々の敗北も遠からず現実となる」 アルジェント:「こちらに犠牲者が出ればそれがそのまま相手の戦力になるからな…。 まったく、厄介な能力だ」 GM(ダグラス):「…現在、ヴェルトハイムがいるとされる“約束の地”」 席から少し離れた場所に立っていたダグラスが不意に口を開く。 「恐らくそこは魂の回収を行なうのに最も適した場所なのだろう。 でなければ、ヴェルトハイム本人が未だに姿を現さない理由に繋がらないだろう」 アルジェント:えっと、約束の地についてラインから何か聞いてないかな? GM:約束の地についてはラインも詳しく知らないらしいからね。 ここは憶測や推測とかで発言してくださいませ。 アルジェント:「やはり敵の本陣を叩くしかないな…。ヴェルトハイムは大量の魂を求めている。 こちらの犠牲者の魂が奴のエサになり、肉体が新たな敵兵となる以上 時間をかけてこちらのメリットになることはない」 GM(ダグラス):「確かにその通りだな。その意見には賛成だ」 君の意見に壁に背を預けていたダグラスは頷き言う。 「な、なら今度はこっちから攻めてやるんっすね!アルジェント様!」 とドヨった声でザックが続く。 アルジェント:そういえば、総本山の扉はどうなってるの? GM:開けっぱなしらしい、ラインが言うには。 アルジェント:ということは、そこに行けば約束の地へは行けるのですね。 GM:イエス。しかし無論のようにそこは敵の本拠地であり二騎士とクリストファーも居る事は確実だ。 アルジェント:「事はそんなに単純ではない。アヴェスター教会の総本山には 確かに『約束の地』への扉があるが、そこは敵にとっても絶対に死守すべき場所 全力をもって防衛してくるだろう。そして厄介なことに敵軍を操っているのはクリストファー。 つまり敵軍は全体で一人だ。対応能力はこちらを遥かに上回る。 そんな状態でこちらから軍を動かせばいち早く察知されて待ち伏せを受けるだろう。 そうなれば壊滅するのはこちらだ」 GM(ザック):「な、な、ならどうするんっすか!このまま守衛に徹していても ジョシュア団長の言う通りジリ貧ですよ!」 アルジェント:「必要なのは相手に守らせないことだ。 相手が攻めにまわっている間に気づかれないように敵軍の中枢に少数精鋭 つまり星十騎士団を送り込みクリストファーを叩くしかない。 全体が一人である軍は確かに脅威だが、奴一人を落とせれば全体が瓦解する。 だが個の実力差で現状を維持している以上、星十騎士団を全員送りこむことはできない。 攻め落とせるギリギリの数を送り込み、守れるギリギリの数を残すことになるだろう」 GM(ザック):「な、なるほど!さすがっすよ!アルジェント様ぁ!」 アルジェント:「ここまで話せば今日星十騎士団の皆に集まってもらった意味もわかるだろう」 GM(ジョッシュア):「うむ。卿の作戦に従おう。アルジェント卿」 ザック・ダグラス・ジョッシュア全員が頷き――それと同時に 「ああ、分かったよ。兄さん」 「なるほど。理に敵った戦略です」 この会議室の扉が開き、そこから現れるのは二人の星十騎士団。 アルジェント:「来たか」 GM:君の弟にしてかつてのアヴェスター教会の指導者ライン。 そして、アルレシオ公国の副騎士団長にして“天剣”アゼル。 アルジェント:よし、十人揃った! GM:この場に集まった現勢力を確認しながらジョシュアは己の隣に座る男に声をかける。 「卿はどう思う?サクス」 サクス:「ふん、俺は頭脳労働は苦手でな。元より余計な犠牲を出す事はない。 当然俺もその中に入るのだろう?」 アルジェント:「ああ、そのとおりだ」 サクス:「それなら問題はない。無駄な犠牲を出す事はないだろう」 GM(シアリー):「それじゃあ、決まりだね」 作戦が纏まったのを見て奥の玉座に座っていたシアリーがそう言う。 「じゃあ主力の精鋭と防衛に残す星十騎士、あとはこれを決めるだけだね。 と言っても、これが今回の作戦の最も重要なところだよね…」 ディゼル:NPCの中から何人か連れていけるのかしら?(笑) GM:ザック連れて行っていいよ(笑) アルジェント:ちょっ!死ぬっ! GM:誰をどこに配置して、誰を連れて行くかはPLさんに任せます(笑) それによってイベントも変えましょう。 アルジェント:「はい、おそらく俺とサクスは攻め込む側に入ることになるでしょう。 敵側にシュトルムとヴァルターがいる以上は」 GM:そんな君達のやり取りのなか心痛な面持ちのラインが話しかけてくる。 「……兄さん、僕は…防衛に、回るよ…」 アルジェント:「理由を聞こう」 GM(ライン):「気づいているかもしれないけど、僕は…今の僕は“称号”能力を失っている」 アルジェント:「……やはりか」 ディゼル:すっかり忘れていた(笑) GM(ライン):「あの時、半年前の戦いで僕はヴェルトハイムに“称号”を奪われた…。 それだけじゃなく力も大分失った…こんな状態じゃ兄さん達の足手まといだから…」 口調こそ静かなものの、ラインは拳を握り力を無くした自分を責めるようだった。 「だから、クリストファー達を倒すのは兄さん達に任せるよ」 アルジェント:「ならばここで俺の代わりに司令官を頼む。 俺が攻め込む側にまわれば、ここに母さんの血を引く者はお前だけだ。 アヴェスター教会の信者達にはまだまだ士気の象徴となる者が必要だ。 お前にしかできないことだ、できるな?」 GM(ライン):「兄さん…」 その言葉に一瞬言葉を詰まらせるラインだったが君の瞳をまっすぐ見返し―― 「うん、だけど兄さんも必ず生きて戻ってきてね。 そうじゃないと兄さんのお姫様が悲しむ事になるから」 アルジェント:「ああ、俺は必ず帰ってくる。なんだかんだでお前との約束もまだ果たしていないからな」 GM(ライン):「あはは、そういえばここ最近はずっと忙しかったからね」 そう明るい声でラインは笑う。それで、残りの配置はどうしましょうか?アルジェントさん。 アルジェント:えっと、現在は…攻め:アルジェント、サクス 守り:ライン 残り:アゼル、ザック、ダグラス、ジョシュアだね。 GM:だね。では。そこでダグラスさんが「私はどちらかと言えば守勢の方にまわして欲しい。 本陣まで行く途中に私の発作が出ないとは限らないしな」 そこには家(持ち場)から出たくないと言う副音声が含まれていた(一同笑) アルジェント:「わかった。ここならばいざというときの治療はできる。 天術師の殲滅能力は防衛向きでもあるしな」 GM(ザック):「オレオレ!オレは一緒に行くっす! サクス兄貴やアルジェント様と一緒に突入するっすよ!」 アルジェント:こいつをどうするかだな…。 GM:すげぇ冷めた感じだ(笑) アルジェント:うーん、とりあえずザックは保留で たぶんジョシュアは守り側の方がいいと思うんだよねぇ。 アルレシオの騎士たちにはジョシュアがいた方がいいと思うし。 GM(ジョシュア):「ふむ。確かに私は攻めるよりも護る方が性に合うな。 卿らなら私が護りの騎士として相応しい事を十分に承知しているしな」 アルジェント:「あなたならアルレシオの騎士たちの扱い方も熟知している。 いざとなれば守りの要となるだろう。頼みます」 GM(ジョシュア):「心得た。卿らが帰還する場所は私が守り抜いてみせよう。 だから存分に戦いに集中してよいぞ」 力強い宣言と共にジョシュアは傍らにある剣を握る。 アルジェント:残るはアゼルとザックか。これかなり個人的にだけど アゼル連れて行きたいんだよねぇ。その方が彼は全力出せるかなぁと。 これキャラクターは知らない情報なんだけど。 ディゼル:あ〜、攻めに関してはね(笑) GM:いっその事、遊撃隊兼囮に使うとか。 アルジェント:あ、それもありだなぁ。彼だけ別方向から攻めに行ってもらうってことか。 アゼルの実力を知っているクリストファーは、それが囮だとわかっていても無視できない。 GM:そんな感じ(笑)敵の戦力はそれである程度分散されるでしょうし。 アルジェント:「アゼル、あなたには少し特殊な役割を頼みたい」 GM(アゼル):「私に出来ることでしたら」 アルジェント:「あなたには俺たちとは別ルートで総本山へ向かってほしい。 平たく言うと囮だ。クリストファーの軍勢と派手にやりあってほしい。 もちろん可能ならばそのまま突っ切ってもらっても構わない。 クリストファーは囮だとわかっていてもあなたを絶対に無視できない」 GM(アゼル):「…いいでしょう、承りました。 あの人形遣いには私も一泡吹かせてあげたいですからね」 君の命に頷きアゼルもまた剣を手に取る。 アルジェント:「ザック、お前は俺たちと一緒に来てもらう。 俺がシュトルムに、サクスがヴァルターに足止めをくらった時、自由に動けるのはお前だけだ。 そうなったら、お前がディゼルを助け出せ」 GM(ザック):「っしゃぁ!!…ってえ、いや、ちょ…それってオレの役割、めちゃ重要じゃないんっすか…?」 アルジェント:「そうだな。最悪、ヴェルトハイムの攻撃にさらされるかもしれない。 クリストファー自身が出てくる恐れもある。お前はそれをかいくぐってディゼルを助けるんだ」 GM(ザック):(遠まわしに死ねって言われてる?) ディゼル:おもてぇ(笑) GM(ザック):「り、了解っす!このザック=イルスパーナ!全力でご期待に添えるっす!!」 肩をがたがた震わせながらザックもまたその手に剣を掲げる。 アルジェント:「これで構いませんか?シアリー様」 GM:君のその意見にシアリーは笑顔で答える。 「うん、構わないよ。この戦いの終結を任せるよ、アルジェント」 アルジェント:「承知いたしました」 そうして作戦会議は幕を降ろした。 この場に居た全員が肌で魂で感じていた。 明日、全ての戦いに決着がつくであろう事を――。 ◆オープニングシーン2 〜この世の白〜 それは瞬間にして刹那の出来事。 秒数にすらカウントされなかった剣戟。 “約束の地”にて君とヴェルトハイムの両者は同時に同じ獲物ナイトブレイカーを放った。 そうして、君の意識は途絶えた。 やがて―――――長い空白の後。 GM(???):「…やぁ、お目覚めかい。ディゼル」 その“声”は聞こえた。 それは君の心に魂に幾度となく話しかけてきた“あの声” ディゼル:何かを探すようにあたりを見渡すも何も見えない――、感じない―― 「また…君なのか…?」 GM(???):「ああ、だけど今回は直接会えるとは思わなかったよ。ディゼル=オウディラス」 その声を聞き終わると同時に、君の意識はハッキリと戻り、目の前の視界が開く。 そこは――純白の世界。 ディゼル:…直接?その言葉に耳を疑った時、視界が、開いた。 GM:そこは白の宮殿。そう言ってもいい美しい場所。 だが周りに見える風景は先程までいた“約束の地”とよく酷似した美しい虹色の世界が広がっていた。 そんな白の宮殿の王座を前に、君は居た。 そして“そいつ”は君のすぐ眼前、目の前の王座に居た。 「改めて始めまして、自己紹介しておくよ。僕が“この世の白”ヴァイスだ」 玉座に座ったまま、その美少年は言った。 GM(ヴァイス):「まさかこんな状況で君に出会うとは…全く予定外もいいところだ」 ため息混じりに目の前の少年は呟く。 ディゼル:「この世の白だって? 今まで僕に幾度となく話しかけてきた、あの声の持ち主が…?」 それにヴェルトハイムとの戦いはどうなったんだ。 ますます今の状況がわからない…? GM(ヴァイス):「…まずは順を追って話そうか。ディゼル。 ここは“約束の地”と密接した君達の世界とは次元が異なる別空間だ。 そして、君とヴェルトハイムの一撃。あれは覚えているね?」 ディゼル:そう、確かあれは――。この世の白の言葉で鮮明に思い出す。 GM(ヴァイス):「あの瞬間に君達の打ち合いによって生じた衝撃は次元に歪みを起こし 亀裂さえ起こすほどの強大な一撃だったんだよ。 そして、僕はその次元の亀裂を利用して君をここに転送させたんだ。 そうしないと、今の君ではヴェルトハイムに殺されてしまうからね」 そう聞きようによっては辛辣な言葉を続ける。 「つまり、君をここへ連れてきたのは君を救出するためだったんだよ。 それに今回だけじゃなく、僕は君の事を何度も助けてきているんだ。 お礼の一つくらいは欲しいところだね」 ディゼル:彼のちょっと気に障る言い方にムッとするも 「…ありがとう、確かに今まで君に助けられていたよね」 と、今までの出来事を思い出しそう言う。 GM(ヴァイス):「結構素直だね。そういうのは嫌いじゃないよ」 君の素直なお礼に対してまんざらでもないのか、やや上機嫌のままヴァイスは続ける。 「さて、それじゃあディゼル。君は僕に何か聞きたい事があるんじゃないかな? 折角直接会えたんだ、いくつか答えてあげてもいいよ。 僕が君を助ける理由とか、ここから出る手段とか、現在向こうの世界がどうなっているか、とかね」 ディゼル:そう言われても逆に聞きたいことが多すぎて困るくらいだ。 だが、ふと気になったことを聞く。 「そういえば僕がここに来てからどれくらいの時が過ぎたんだ?」 GM(ヴァイス):「さぁね、もうすぐ半年くらいじゃないかな」 アッサリ。 ディゼル:「半年―――?!」予想外の返答をあっさりと返されて驚く。 GM(ヴァイス):「ここでは現実世界よりも時間の流れが遅く流れるんでね。 君が気絶していたのは丸一日と少しくらいだったけど、それを考えると半年くらいだろうね」 ディゼル:「え?それじゃあ世界は?みんなはどうなってるんだよ…!」 GM(ヴァイス):「向こうは大変みたいだね。クリストファーの奴がアヴェスター教会を乗っ取り 新たな勢力を結成して大陸は戦火の渦だよ。君の仲間も必死で抵抗しているけど そろそろ限界みたいだね」 ディゼル:「そんな…!」 その言葉は自分にとって辛いものだったが、ヴァイスからはそんな物言いは感じられない。 「君はこの戦いを見てるだけってことですか!」 その落ち着いた彼を見て多少語気が強まる。 GM:ヴァイスは君の焦りなんか気にした様子は無くただ冷静に答える。 「その通りだよ」 そこには一切の感情が込められていない。まるで人の生死に関心が無いように。 「僕は世界を管理・監視・そして調整する管理者にして干渉者。 たかが数万の命が消えても特に何とも思いはしないよ」 ディゼル:「君は―――!世界を監視、管理しているだって…? これが世界を管理するということなのか…!一度に、幾万の命が失われているという状況が!」 あまりの怒りに声が震える。 GM:そんな君の怒りを受け、何かを考えるようにヴァイスは呟く。 「…人間らしい言葉だね、ディゼル。僕にもそんな頃があったような気がするよ」 と、先程までのどこか高慢な態度とは異なる憂いを帯びた表情を見せる。 「…まあ、今の僕にとっては世界がどうなろうと別に構わないんだよ。 ただヴェルトハイムの目的が達成されると僕に取っては厄介な事になるかもしれない。 そして君は向こうの世界を、そこにいる大切な人々を護りたい、だろう? なら、僕と手を組んでクリストファー達、そしてヴェルトハイムを倒さないかい」 アルジェント:またスカウトが来た。 GM(ヴァイス):「ああ、手を組むと言っても安心していいよ。 僕はここから出られないから、君を向こうに返す手伝いをするだけだから」 ディゼル:彼の言うとおり、今世界が危機的状況ならば 一刻も早く、元の場所に戻るべきなのだが 彼のいましがた言った人の死についての言葉が頭に残り 利害一致という観念だけで手を取るのはどうも気が進まない…。 GM(ヴァイス):「まあ、どうするかは君に任せるよ」 ディゼル:「…分かった、ヴェルトハイムを倒せるなら、手を貸すよ」 GM(ヴァイス):「そう、なら決まりだ。それじゃあ、早速準備を始めよう。時間も迫っているからね」 言ってヴァイスは立ち上がる。 「ただ、一つ君に伝えておくよ。ディゼル。ヴェルトハイムを倒す前に君の前には必ず 聖十騎士団第四騎士…いや、かつての僕の配下にして“神の代行者(トゥアハ・デ・ダナーン)”の一人 第三代行者“人形遣い”クリストファーが立ちはだかる」 ディゼル:「ヴェルトハイムを倒そうとするなら 必ず彼を守ろうとクリストファーが出てくるって訳か…」 GM(ヴァイス):「そう、そして肝心な事を確認しておくよ。 本来の君は3年前に彼の手によって殺されている。 今の君は彼が創った人形にして、その魂もかつての君のコピーに過ぎず その人形の身に魂が定着しているのはクリストファーの術によって成立している。 そのクリストファーを倒せば君に掛かっているその術も剥がれていく。意味は分かるね?」 ディゼル:「彼を倒せば、僕の魂がまたここに戻る…。 その前に奴らを倒さなきゃいけないって事か」 GM(ヴァイス):「そう言う事だね。君に残された時間は僅かとなる。 果たして、その状態であの混沌を倒せるかどうか…。 まぁ、どうなるかは僕はここでゆっくり見物させてもらうよ」 言ってヴァイスは宣言する。 「さぁ、それじゃあ始めよう。 向こうと、この世界を繋ぐ“門”を開こう―――」 |