第19章 一筋の決意 

◆オープニングシーン1 〜一筋の決意〜
――あれから半日。既に朝日が昇り、昼が近くなった頃。
イオスは一人、完全に崩壊したヴァルムオンド邸の前に立っていた。
今更、この館に対し彼は何の感慨も持ってはいなかった。
だが彼はかつて自分の部屋であった場所からある物を回収するべく瓦礫の山となった場所を探し回り
遂にその目的の物を見つけ出した。

イオス:一冊の古ぼけたノート、緑色の宝石のはめられたペンダント。
そして銀の学院を卒業したときに貰った銀の勲章。

GM:それら全てが在りし日のままそこにある。

イオス:古ぼけたノートを見る。
「まさかこれを再び開くことがあるとはな…」

それはかつてまだ銀の学院に通う前からイオスが設計していたある剣に関する記述。
彼が持つ炎は“地脈(アーティファクト)”第四階位『紅蓮(サラマンダー)』による炎と
生まれつき得た属性『陽』による加護の二つの混同により創生される白き炎。

故にその火力、能力の高さに耐え切れず彼が扱う剣は皆、例外なく燃え落ちていった。
それが為にイオス=ヴァルムオンドはこれまで剣に乗せる炎を
ある一定のレベルまで抑える必要が迫られていた。

ここに記された剣はそんな彼の炎に耐えられる彼の為の剣。
だがそれは未だ机上の空論の品物であり、その剣を完成させる為の材料、そして技術が足らず
彼は諦め、それをこれまでずっと封印していた。

だが――。

イオス:緑色の宝石のはめられたペンダントを見る
「フローリア王女…俺はあなたに何も応えてやることができなかった…」

それはかつて幼き頃、イオス=ヴァルムオンドが初めてフローリアと会った時に
彼女に手渡された宝石。

イオス:銀の勲章を見る。「いろいろなことがあった…ここでは…」

それは世界最高の学院、銀の学院を卒業した者にのみ送られる卒業証。
それを持つ者は学院の卒業生としてあらゆる国での受け入れが可能となり
世界最大の国、エデン帝国の騎士として無条件で迎え入れらる程の栄誉の証。
だが、同時にその勲章にある宝石は世界でも有数の合金が使われており
それはあらゆる炎に対して耐性を持つ、極めて稀な武器の材料とも成りえる品物。

イオス:…あの時の戦いで、持っていた剣は死の王レオードによって折られた。
「そう、俺は思い出を、自分の憎悪のために利用しようとしている…。
だが、俺はこの刀でレオードと戦わなくてはならない、最後まで俺に応え続けてくれたこの刀で」
今こそ自身のキャパシティを完全に補える刀を創造する。

「思えばこれを書いたときが、レオードを超えると決意したときだったな…」

イオスは静かに持っていた、すでに刀身が折れた刀を見る。

(レオードの斬撃、あれを俺は避けることも受けることもできなかった。
つまりこの刀が折れたのは天術を防いだときのはず。
だがこの刀は、俺が倒れるそのときまで折れずにいてくれた…)

GM:イオスのその刀の刀身はボロボロであり柄の部分にまでその痛みは広がっていた。

イオス:刀をぎゅっと握る。「新たに生まれ変わるこの刀で、俺は己の呪いの全てを断ち切る!
たとえそれが、自らの死を意味していようとだ!」

GM:ノートに書かれた刀は当時、それを完成させるだけの自分の力量と構成物質が無かったために
これまで使われる事なく破棄されたもの。
だが、今の君にはそれら全てを満たす条件があった。
原案たるノート。、天力の結晶であるフローリア王女よりプレゼントされた宝石。
そして構成物質の核となりえる銀の勲章を握り締める。

イオス:「すまない」
何に対する謝罪か、ただその言葉は静かに吐き出され、静かに消えた。

そうして、イオスは折れた剣をその場に置き―――作業へと入った。
だがやがて、そんな作業を行なっているイオスの後ろから一人の少女の声が聞こえる。

GM:「…あの」 その声の主はセクエンツィアだった。

イオス:「何だ」

GM(セクエンツィア):「…何をしているんですか?」
そう不思議に疑問を口にしてくる。

イオス:「新しい刀を作っている。折れた刀を新しく生まれ変わらせて」

GM(セクエンツィア):「…そう…ですか」
その一言の後に訪れるしばしの沈黙…。
「…あの、私が貴方へ送った手紙…見ました」

イオス:「手紙…?ああ、君が持っていたのか。
レオードの斬撃でズタズタになったと思っていたが、持ちすぎて俺の未練がましさが移ったか」

GM(セクエンツィア):「…私には…貴方の事だけがわかりません…。
あの手紙に書いてあった記憶も…私には…ありません」

イオス:「そうだろうな。ペレリウスはそう言っていた」

GM(セクエンツィア):「…手紙では貴方と私は…すごく親しかったのが分かりました…。
でも、今は…違うんですよね…。私はあの時の私にはなれないから…」

イオス:「失われたものは二度と戻りはしない。
それがどんなに大切で、かけがえのないものだとしてもだ。
それに、今の君は俺が死んだとしても泣かなくて済む」

GM(セクエンツィア):「…一つ聞いてもいいですか?
貴方にとって、昔の私は…どんな存在だったんですか」

イオス:それにはしばらく間をおいてから。
「誰よりも大切な人だった。誰よりもかけがえのない人だった。
最初に俺の心に踏み入ってきて、最後まで俺を支えてくれた。最強の呪いで、最高の希望だった。
俺に、誰かを守れると、誰かを救えると、そんな甘い夢を見せた、誰よりも恐ろしい人間で…!
……誰よりも俺を信じていた……」

GM(セクエンツィア):「…誰よりも…」
そう静かに呟いたあとセクエンツィアは君にもう一度問う。
「じゃあ、今の私は貴方にとってどんな存在なんですか?」

イオス:「それは…」 答えが…出ない。

GM(セクエンツィア):「…私はまだあなたの事が分かりません。
私にとって貴方が大切な人なのか…そうでないのか…。
だから…今は知りたいんです。あなたの事を。イオスさん。」
と、そんな風に話していた君とセクエンツィアの場所に一人の男が来る。ロトゥスだ。
「…邪魔をしたか?イオス」
と彼は先程まで話していたであろうセクエンツィアを横目にそう口を開く。

イオス:「そう思うなら帰れ」

GM:ひど(笑)。まぁ、そんな君の発言に対して気にした風もなくロトゥスは用件を口にする。
「…お前に伝える事が二つあって来た。それを伝えればすぐ帰るさ」
言ってロトゥスは話しを始める。
「まず一つ目だが、オレはお前らと北へ行く事はできない」

イオス:「そうか」

GM(ロトゥス):「各地で魔族達の行動が活発化して大量の被害が出ている。
オレはそれらの駆逐に向かう事にする。…それに先日、受けた傷が完治していない。
行っても足手まといだろうしな…」

イオス:「好きにしろ」

GM(ロトゥス):「…もう一つ」 と彼はこれまで以上に真剣味を帯びた口調で続ける。
「あのイクフォードという男…何者だ。
オレは奴と二度対峙した。だがその二度とも戦いにすらならなかった」

イオス:「かつてここで俺の使用人をしていた、俺の心に踏み入ってきた二人目の人間だ。
もっとも人間という呼び方は語弊があるかもしれんがな。安心しろ、頭は弱い」

GM(ロトゥス):「…そうか」 そう君の説明を受けるも真剣な表情はそのままで
「――イオス。奴には気をつけろ。オレは多くの敵と戦ったが奴のように実力の底も…
その欠片も分からなかった奴は初めてだ。それに…」
と、そこで彼は考えるような仕草で一拍置く。
「何よりも、奴からは何か…不気味な違和感を感じた」

イオス:「覚えておこう…」

GM(ロトゥス):「あの『四柱(テトラード)』の中で最も用心しておくべき存在は…奴かも知れないぞ」

そのロトゥスの言葉を聞き終えると同時だった。
イオスの手で加工され創造されていた剣が遂、その刀身を露にした。
白銀に煌めく新たなる刀。そう、彼は己に取って最高の刀をその手で完成させた。

GM(ロトゥス):「……行くのか?イオス」

イオス:「ああ…」

GM(ロトゥス):「分かった…。世界の命運はお前に託したぞ」

イオス:「そんな崇高な使命を持って行くわけではない。もっとどす黒い、ただの憎悪だ」

GM:そう言って歩き出す君にすれ違い様、ロトゥスは呟く。
「…お前の敵は憎悪で倒せる敵なのか、イオス…」

イオス:「何であろうと同じことだ。何をもってしても、勝てる気は微塵もしない」

GM:ではそう言って歩き出す君にセクエンツィアが近づいて行く。
「…私も一緒に行きます。貴方の傍で貴方を知りたいから…」

イオス:刀を鞘におさめるとセクエンツィアの方を向き
「君が俺のことを知ろうとするのは勝手だ。だが中途半端に知ったところで悲しみが増えるだけだ。
レオードを倒し、全ての呪いを断ち切ることは…俺の死を意味する」

GM(セクエンツィア):「…それでも見つけたいんです…。
今の私は自分でも何かがぽっかりと抜けたのが分かるんです…。
貴方と一緒ならきっとそれが埋まる何かが見つかるはずだから」

イオス:「そうか…」
それまでの冷たい口調とは違い、一瞬だけ優しい口調になって言う。

GM(セクエンツィア):「私は…そんな希望を信じます」

イオス:「希望か…」 何かを思い出すように間を置き

「かつてのセクエンツィアならば……いや、失われたものは二度と戻りはしない…」

そう、静かにイオス=ヴァルムオンドは呟いた。


◆オープニングシーン2 〜父親〜
それは夢。幼い頃、リザベラ=ヴェストーネがフィリア=クーへと呼ばれていた頃
実の父親と共に暮らしていた時の夢。

フィリア:「…………。……、――」
音は聞こえない。色も分からない。

GM:君の父は君に優しく、いつでも記憶の中の父は優しい姿しかなかった。

フィリア:背中にあるのは忘れていた感覚。もうない筈の翼の記憶。

GM:しかしそんなある時、君は父に疑問を持った。
それは父が何の仕事をしているのか、と。子供なら誰しもが一度は思う他愛ない疑問。
ある時、君はそれを父に尋ねた。

フィリア:「……、……」
何て聞いたのか、今はもう思い出せない。

GM:君の疑問へ父は「…この世界のためになる事をしているんだよ」と答えてくれた。

フィリア:その声だけが、妙に鮮明だった。
「この世界のためになること」
当時の私は、かけらの疑いも持たず父を尊敬した。

GM:だけど君はある日、父の仕事がどうしても気になり、父にナイショで
父の働いている場所へとこっそりついて行った。そこは白い壁で作られた巨大な施設。

――やめろ。

フィリア:……なぜ?

――いくな。

フィリア:……いくよ?

GM:その中では見た事の無い白衣を着た男たちが何人もいた。

――……だめだ。

フィリア:……父、さま?

――知りたくない。

GM:「サンプル008は?」「脳の腐敗も肉体の裂傷も激しい、こいつも『廃棄』だ」「ああ、了解だ」
そんな感情の無いやり取りが聞こえた。

フィリア:……なにをいっているの?

――聞くな!

リザベラ:当時の私は、理解しようともしなかった。

GM:困惑する君はこの時、必死に父を探した。

フィリア:……父さま! どこ? どこなの!?

GM:そうして、君は施設の奥にいた父を見つけた。

――やめろ

フィリア:……父さま。

GM:だが、その父の表情はいつもの優しい父とは違っていた。

――それ以上近づくな!

GM:傍らには片腕のない白衣を着た眼鏡の男がいた。

フィリア:……どうしたの父さま。このひと、だれ?

――だめだ、聞くな。離れろ。

GM(白衣の男):「閣下。被験体017の方、移植が完了し、ようやく『完成品』となりました」

――知るな。見るな。耳を塞げ。口を閉じろ。

GM(父):「そうか、ようやくの『完成品』か。これまで消していった命も無駄ではなかったと言うものだ」

フィリア:だが私は、……知った。見た。耳で聞き、呟いた。
……なにをしているの?

――だめだ!

GM:そう、君は現実の真実を…『知っていた』

フィリア:――知らない!

知っている。

フィリア:――忘れた!

覚えている。

GM:しかし、その瞬間、周りから悲鳴が上がる。

フィリア:…………。

――――。

GM:「う、うわああああ!た、大変ですっ!閣下!サンプル017が制御処置を破りっ……――
ぎゃあああああぁぁッ!!!」
目の前で血が噴き出ていた。たくさんの血が流れていた。

フィリア:……とお、さま?――……逃げて。

GM(白衣の眼鏡):「ひっ!せ、制御処置を自力で解いたのか…?!
く、くるな!!来る―――うああああああぁぁぁ!!!」

フィリア:もう、間に合わない。

“どしゅ―――”

フィリア:私はこの惨劇を知っている。

GM:白衣を来た眼鏡の男の首がその場に落ちた。

フィリア:……私はこの虐殺を見ていた。

GM:それを見た君の父は後ろを振り返り、この場より駆け出そうとする。

フィリア:――私は。

GM:その時、父は通路の先にいる君の存在に気づいた。

フィリア:……とおさま!

GM:その時の表情は何だっただろうか。驚きか、哀しみか、それとも悔恨の表情か。
だがそんな事よりもただ一つ、君の中で鮮明に刻まれた記憶は君の名を呼び
君に向けて駆け出す父の声と姿。
「―――フィリア!」

フィリア:色が、付いた。

GM:父は君を庇うように抱いた。

そして―――

フィリア:白黒だった世界に。
父から、色が――私は、この色を知っている。

GM:そう、何度も見た忘れられない夢。その続き。その真実。その軌跡。

リザベラ:――もう、やめてくれ。

何を言っている? 目を逸らしていただけのくせに。
……今なら、もうわかるでしょう?

リザベラ:――分かりたくない! もう、たくさんだ。

前を見ろ―――『人形の私』。

フィリア:知っているでしょ、『死んじゃった私』

リザベラ:――やめて、くれ

GM:二人の君。そして標された真実。取り戻し思い出された悪夢(現実)。
そうして、君は―――目が覚めた。

リザベラ:「……父さま」

GM:気づくとそこはベットの中。見覚えのある、エデン帝国での自分の自室。

リザベラ:上体を起こそう。

GM:見るとあの時、死の王との戦いで受けた傷は包帯や消毒、天術などで
ほぼ完治に近い状態で癒されている。

リザベラ:「……ありがとうございます。シュヴァルスト様」
俯いて、言うよ。

GM:ちなみに君の自室のすぐ隣りはシュヴァルスト様のお部屋です。

リザベラ:ほむ……。では簡単な…普段着。普段着に着替えて部屋を出ます。

GM:了解です。

リザベラ:廊下に出て、シュヴァルスト様のお部屋の前に。ノックをします。

GM:では、ノックをしますが返事が無い。時刻はお昼時。

リザベラ:「……この時間では、シュヴァルスト様は執務だったか」
めったに言わない独り言を。

GM:では君がそう呟き、しばらくすると扉の奥より
「………ッごふ!」と言う嗚咽する声が聞こえてくる。声の主は紛れもなく部屋の主のシュヴァルスト。

リザベラ:「……失礼しますッ!!」 扉を乱暴に開けるよ。

GM:見ると壁に手をつき、うつむくシュヴァルスト様の姿が。
その足元には口から流れ落ちたのであろう血だまりが存在した。

リザベラ:「シュヴァルスト様ッ!?」 駆け寄ろうか。

GM(シュヴァルスト):「…リザベラか…、もう起きたか…」
そう言ってシュヴァルストは駆け寄ろうとする君を手で制する。
「……フッ、つまらんところを見られたな…」

リザベラ:「その血は、一体……?」

GM(シュヴァルスト):「…見られた以上隠し通すことはできぬな。
実は残念ながら私は病を持っている。それも極めて厄介な難病をな。
その所為で時折このような発作が起こることがある」

リザベラ:そうだったのか?!

GM(シュヴァルスト):「特に激しい戦闘を行なえば発作は跳ね上がる。
…故に私が戦闘を行なえるのは、せいぜい数分が限界だろう…」
言い終えシュヴァルストは口元にある血を拭い告げる。
「だからこそ……私は私の剣を探していた」

リザベラ:「……主治医のカルフェ様は貴方の体を御存知なのですか?」

GM(シュヴァルスト):「…まぁな。だが口止めはしてある。
この病は現在の医療や天術で治せるような代物でもないんでな」

リザベラ:「では、せめて御自愛ください。貴方はエデンにとって欠いてはならない存在です」

GM(シュヴァルスト):「…フッ、お前からそんな言葉をもらえるとはな」

リザベラ:「それに……」 言おうと思って、言いよどむよ。

GM:では、シュヴァルストは体調が落ち着いたのか、いつもの雰囲気に戻り
そのまま床の血をタオルで隠した後イスへと座る。

リザベラ:「…シュヴァルスト様。イオス=ヴァルムオンドの護衛ですが」

GM(シュヴァルスト):「…ああ」

リザベラ:「現在、彼はどこにいるのですか?」

GM(シュヴァルスト):「安心しろ。奴はまだ崩壊したヴァルムオンド邸に留まっている」

リザベラ:「では、空間水を。すぐに任務に戻ります」

GM(シュヴァルスト):「…その前にリザベラ。
知っているとは思うが、お前がいたフォブリア大陸で魔族達の王…死の王がその姿を現した」

リザベラ:「……レオード=ヴァルムオンド。護衛対象の父親、でしょう?」

GM(シュヴァルスト):「その通りだ。奴は大陸のみに留まらず全世界に対しても宣戦布告を発した。
それに伴い各地で魔族達の蹂躙や攻撃が勢いを増した」

リザベラ:「…………」 何も言わず聞いていよう。

GM(シュヴァルスト):「もはや任務はイオス=ヴァルムオンドの護衛だけでは済まされない状況だ。
世界にとってもお前にとっても」
そう言ってシュヴァルストは君の胸に存在する死の痣を見る。

リザベラ:「この痣が、何か?」 あの時、気絶してたし。

GM:「それは“死の痣”。その痣は一週間後にお前の心臓を食い潰す…」
それは彼にしては重く、深い感情の乗った言葉。
「リザベラ。死の王を倒せ―――」

リザベラ:「それが次の任務ですか」
無感情に。いつものように。

GM(シュヴァルスト):「いいや、任務はそれではない…」
言って彼はこれまで見せたことのない深い、実の娘を慈しむようなそんな瞳を君に向ける。
「任務はお前が生きる事だ。死の王を倒すのはそのための手段にしか過ぎん」
そう彼はハッキリと断言する。

リザベラ:「……シュヴァルスト様」
いつものように無感情な声。だけど……右目から、傷跡にそって
「……あ」 少しずつ震えが大きくなって。
「しゅ、シュヴァルスト、様」

GM(シュヴァルスト):「…フィリア」
不意にシュヴァルストはかつての君の名を呼んだ。

リザベラ:右目から、左目から。涙を流して。
「はい」 フィリアという名の少女は、返事をした。

GM(シュヴァルスト):「生き残れ。必ず…」
一言。だがその一言に込められた想い、感情、それらはこれまで君に贈られて来た
多くの言葉と比較しても仕切れないほど魂に響く一言であった。

リザベラ:「委細……、……承知!」
溢れる涙をこらえきれず、父に背を向ける。

「行って、参ります。父上……ッ!」

背を向けてフィリアに対しシュヴァルストはただ静かに瞳を瞑り呟く。

「ああ、行って来い。そしてお前の『答え』を見つけて来い…。
我が娘・フィリア=クーへよ」

そうして、フィリア=クーへは再び剣を握る。
復讐でも護衛でも増して世界を救うためでもない。
自らが“生きる為の戦い”。
その為に彼女は赴く―――


 
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