アヴェスター教会総本山編 第3章 総本山

◆GMシーン 〜血染めの王国〜
ムーヴェリアス大陸。
そこにはいくつもの国が存在していた。

大陸最大の王国にして、エデンとの同盟国でもあるバルト王国。
アヴェスター教会の圧力に屈し、現在大陸を二分する戦いの中心地に巻き込まれたアーベルド公国。
エデンにもアヴェスター教会にも干渉せずに独自の立場と軍事力を持つ公国・アルレシオ公国。
かつてこの大陸の統一を果たした、強大な軍事力と遺産の力を有したケルヴィム王国。
小国ながらも、古くからの歴史を持つベルー王国。

その中の一つ、ベルー王国にて今、人知れず血染めの殺劇行為が行なわれていた。

「あははははははは!ははははははははっ!!」

王宮内に響き渡る少女の笑い声。
少女の周りにあるのは血染めの惨殺死体のみ。
そして、彼女の前で唯一生かされている国王は腰を抜かし恐怖に震えていた。

「ひ、ひぃ!貴様の、目的は…い、一体なんなんだ?!」

「目的〜?」

さも不思議そうにシュトルムは国王に聞き返す。

「目的なんて無いよ。私はただ人を殺せればそれでいいんだ〜。
ここを襲ったものあいつからの指示で場所はどこでもいいんだよ。
そこに…人間さえいれば、ね」

凄惨な笑みを浮かべ自身もまた返り血に塗れ真っ赤になっている少女は言った。

「ひ、ひぃ…!」

「ただね〜、君に関してはあんまり肉体を傷つけずに殺してってお願いされてさ〜。
私としては原型も分からずにズタズタにするのが好きなんだけど…まぁしょうがないよね〜」

そう言ってシュトルムは両手に持った獲物…ナイフを手に震える目の前の国王へ近づく。

「ひ、ひああぁぁ!や、やめろ!く、来るなぁぁぁ!!」

「さっさと君の心臓を抉り出して、次の場所に向かわないと……あぁ…最高だよ…。
この温かい血の感触…もぉたまらない……ふふっ、次はもっといっぱい殺せるといいなぁ…」

すでに少女の瞳には目の前で泣き叫んでいる男の姿など入っていなかった。
少女の中にあるのは次の殺し場に対する期待と恍惚。
やがて、国王の叫びが王宮内に響き渡り、血染めの獣もまた笑い声をあげ、王宮より姿を消した。
そして血染めのその場に一人の青年が現れ、血と肉に彩られたその様を見て
場違いなほど穏やかな微笑みを浮かべる。
青年は微笑みを浮かべたまま、静かに国王の遺体の傍まで近寄り、その手より何かを出す。

「…さすがは殺しに関しては騎士団随一の手腕と迅速さ。
引き続き、その調子で次もお願いしますよ。シュトルムさん」

そう静かに呟き、青年の姿もまた闇に消えた――。


◆ミドルシーン1 〜総本山〜
GM:ディゼル、アルジェント、君達二人は同時に目が覚める。

アルジェント:そういえばオープニングでの光景は思いだしてるのだろうか…。

GM:それぞれ思い出していてOKですよ(笑)
夢で見た記憶を抱いたまま、目覚めたって感じです。
ちなみに見るとすでにサクスは旅の準備を完了している状態だね。

サクス:「しっかり睡眠は取れたか?」

アルジェント:アルジェント的にはもうそれどころじゃないね。記憶が戻ってるんだから。

GM:記憶が戻っていると言っても二人とも、夢で見た部分の記憶が戻っているだけで
まだ完全に記憶を取り戻したってわけでもないけどね。

ディゼル:「(爽やかな笑みを浮かべて)えぇ、おかげさまで」

アルジェント:あんたナチュラルやな!(一同笑)

サクス:根っからの呑気さが(笑)

アルジェント:「俺は…僕…は…」
自分の顔に手を当て、びっしり汗をかいている。

GM:アルジェントだけがある意味、まともな反応かも(笑)

アルジェント:ディゼルが今までの記憶がウソだったと知ってこの反応は予想しなかった。

GM:確かに、爽やか(笑)

ディゼル:いやぁ、それをここでアルやサクスの二人に言ってもどうしようもないというか
逆に成敗されそうで怖い(笑)。要は敵に動かされてるとも捉えかねないわけだし(笑)

GM:あ、確かに。下手に二人にその事を話したり、動揺をあらわにするよりも
ここはもう自分の胸に内にしまってしまうのが正解かも(笑)

アルジェント:(あれが俺の過去なのか…記憶なのか…?
こんなにあっけなく手に入ったこれが…)

GM:あ、それはそうと君達が起きたのはいいけど、アリスはまだねむねむと寝てる。

アルジェント:アリス?それどころじゃないわ。

ディゼル:アルジェント「いらないものはここに置いて出発するか」的な発言まだ〜?

サクス:扱いひどす(笑)

アルジェント:(怖い…あの幸せそうな光景も、それを焼き尽くす炎も、あの女も…)

GM:君達の言葉など届いていないのか一人戸惑うアルジェント。
そんな彼の姿はこの旅をしている中で君達が始めて見る姿だった。

ディゼル:「……アルジェントさんになにかあったんですか?」
夜中に何かあったのかと思いサクスにそう小声で聞いてみる・

サクス:「いや、特に何もなかった筈だが…あいつなりに思うところがあるのやもしれんな」ヒソヒソ

ディゼル:「………」
思案するアルジェントの姿を見ていると不意に、今宵みた夢の断片を思い出して
顔をしかめる。思い出さないほうがいい、あくまで過去に起こった事実として
受け入れないと自分の心が保てなくなりそうだ。

アルジェント:「俺は…ここにいるのか…?」
そう、ぽつりと声が漏れる。

サクス:「アルジェント、どうした。ディゼルも珍しく元気だというのに
無遠慮に肩を叩きます(笑)

ディゼル:「ぼ、僕はいつも元気ですよ、イヤだなぁ〜サクスさんてばハハハ」
乾いた笑いで返そうか(笑)

アルジェント:ばっと反応して「あ…ああ…。何でもない…」

サクス:「?ふん、おかしな連中だ」

GM:旅をしていて、初めて見せるアルジェントの反応。
だがいずれにしても目的地・アヴェスター教会の総本山はすぐ近くまで来ている。

アルジェント:(あの俺は“俺”なのか…?今の俺は“俺”なのか…?アルジェント…お前は誰だ)
そんな答えの出ない疑問が呪いのように渦巻くが、それを一旦払いのけ
「アヴェスター教会の総本山も間近だな」
といつもの調子を強引に作る。

GM:そう言って、起き上がるアルジェント。
君達全員、一通り出発の準備は出来たがただ一人、アリスだけは未だ眠ったままのようだ。

アルジェント:あ、本当に忘れかけてた。

ディゼル:アリスをまるでゴミのように見下しているアルジェントの顔を見て
「まさか置いてくとか言いだしませんよね?」
アルジェントに言っときましょうか(笑)
「あ、おぶって行けってのもなしですよ」
と言いつつアリスをさっさと起こそう(笑)

GM(アリス):「zzz…」 当のアリスはそんなやり取りなど聞いておらず
未だ夢の中ですやすや(笑)

ディゼル:「ほらっ!アリス、早く起きないとどんな処遇を施されるかわかったもんじゃないょ」ゴニョンゴニョ

GM:では君がアリスをゆっさゆっさしようとした瞬間、君は彼女の瞑った瞳から流れる涙に気づく。
「…お父さん……」と呟いた彼女の一言を耳にした。

ディゼル:その言葉に彼女を起こそうとした腕が止まる。

GM:呟いたアリスだったが、ディゼルの声に反応してゆっくり目を開ける。
「―――っ!で、ディゼル!な、なんだ、お前!…あ、そ、そうか。朝か。う、うん。おはよう」

ディゼル:いったいどんな夢を?君も自分の過去の夢を?
そう聞こうとしたがそう聞いたところで、自分が何を確かめたいのかわからなかったから
「おはよう、アリス」 普段と変わらないような挨拶を、交わした。
「ホラ、もうみんな支度はできてるよ。急がないと置いてかれちゃうかも―」(お手手ワキワキ

アルジェント:手つきやらしい。

GM(アリス):「…お、おい…ディゼル…その、私…何か言わなかったか?」

ディゼル:「ん?なんのこと?」

GM(アリス):「い、いや!なんでもないぞ!今の質問は忘れろ!
よし!それじゃあ行くぞ!いよいよ総本山に行って教会の連中と決着をつける時だからな!」

ディゼル:(良かった、手の事は誤魔化せた…!)

GM(アリス):(この手はとりあえずつねっておくな。ぎゅーー)

ディゼル:いてて(#ω=)

GM:何にしても君達は四人揃って出発をした。

そうそれが君達、四人が共に揃って旅をした最後の瞬間となる事を、この時はまだ知らなかった。

◆   ◆   ◆

アルジェント:早いお別れだ。

ディゼル:ディゼル死別エンドだよ。(おい)

サクス:アリスがいなくなるんじゃね?(笑)

GM:どうなるかは秘密です〜(笑)
険しいニーブルレイ山脈を抜けた更にその奥地。
美しい山々に囲まれたその場所にそびえ立ったそれはまさに荘厳な城と言えるものだった。
あれこそがアヴェスター教会の総本山、その本拠地。

アルジェント:「ここが…アヴェスター教会総本山…」

GM:そして、君達がその城の前に来た瞬間。
そこにはアルジェント、君がよく知る人物が門の前に立っていた。
二刀を腰に構え、どこかやる気のない雰囲気をまとうその人物。
「よぉ、よく来たな。アルジェント」

アルジェント:「レスト…!」

GM:かつての君の戦友でもあり、シアリーを奪った聖十騎士団の第六騎士・レスト。
「そっちいるのがディゼル…だったけ?あとはサクスにアリス。まあ、とりあえず、四人ともようこそ」
レストは君達が来たことに驚くでも動揺するでも敵意を出すわけでもなく、ただ迎えた。

サクス:「まあ、お迎えとはご苦労な事だ。」

アルジェント:「覚悟はいいか?レスト。貴様が、貴様らが奪ったものの対価を、支払うときだ」
こっちは敵意バリバリだぜ。

GM(レスト):「覚悟ね。生憎、アルジェント。オレはお前と戦うためにここにいるわけじゃないんだ。
オレはな、サクス、お前の言う通り出迎えるために来た」
そう宣言した瞬間、レストの背後にあった巨大な扉がゆっくりと開いていく。
それはまるで君達を歓迎するように。

アルジェント:「貴様に無くても俺にはある。自分のしたことを、よもや忘れたとは言わせないぞ」

GM(レスト):「まぁ、確かにな。正直、恨まれても仕方ないか…。
だけど、その前にお前は一番気になっている事を確認するのが先じゃないのか?
そう、シアリー陛下の安否」

アルジェント:「ああ、まずは姫様を取り戻す。貴様を潰すのはその後だ」

GM:その君の言葉を聞き、レストは君達から背を向けて城の中に入って行く。
「だったら話を早くしてやるから着いて来な、歓迎の準備は出来てるらしいからよ」
そう言ってレストの姿は扉の奥に消える。

アルジェント:「いいだろう」
ついていくぞ。バリバリに警戒しながらだけど。

GM:ならば中に入った瞬間に君達は驚愕する。城の中、そこには左右の空間いっぱいに
アヴェスター信者が君達を迎え入れるように一斉に並んでいた。
皆、整列をしてそれはまるで凱旋から帰国した英雄を迎え入れるよう。
その通路の先をレストは歩いていた。後ろから君達が来ているのを確認しながら。

アルジェント:(貴様ら…全員無事に帰れると思うな…)
アルジェントが彼らを見る視線はお世辞にも穏やかなものであるとは言えない。

GM:君達の少し先を歩くレスト。やがて長い通路を抜けた先、荘厳な扉の前にてレストは立ち止まる。
「さて、と。覚悟はいいか?アルジェント」
後ろを振り向き確認するようにレストはそう言う。

アルジェント:「覚悟をするのはお前の方だろう」

GM(レスト):「この先の扉を開けばお前のこれまでの世界は崩れ、“真実”がお前の前に姿を表す。
それでも、お前はこの先に行くか?」

アルジェント:「ここでお前を倒していくか、その前に行くか。
俺の選択にはそれだけの違いしかない」

GM(レスト):「そっか」 その一言だけを返し、レストは門のほうへ振り返り
「なら、開けるぜ」
そう言った瞬間。

“ごごごごごごごっ…”

扉が―――開かれた。

GM:そこは言うなれば教会の聖堂に近い場所だった。
天上からは日の光が差し込み、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
そんな神秘的な場所で、君達は眼前にある巨大な十字架に目を奪われる。
いや、正確にはその十字架に磔にされている人物に対しアルジェントは目を奪われる。

アルジェント:「姫様っ!!」

GM:そう、磔となっているのは紛れもない――シアリーだ。

アルジェント:だっと走り出すぞ。

GM(シアリー):「……ん…」
君の声に反応するようにゆっくりとシアリーの瞼が開く。
シアリー「…アル、ジェント…?」
君を見てシアリーはすぐに君の名を呟いた。

アルジェント:「姫様!無事ですか?!怪我は?!すぐにそこから降ろします!」

GM(シアリー):「え、あ、うん、大丈夫、問題ないよ。…って!な、なにここ、た、高い〜〜!」
少し混乱をしているようだがシアリーの身体には傷一つもない。
そうしてアルジェントがシアリーの近くに来た瞬間、君の前に一人の男が姿を現す。
それは蒼い髪を持つ聖十騎士団の制服を着た男。

アルジェント:げっ、まさか。

GM(クリストファー):「おっと。申し訳ありません、アルジェントさん。彼女はまだ渡せないんです」
そう言って微笑みを浮かべ現れる男。
「初めまして、一応ご挨拶をしておきますね。
僕は聖十騎士団の第四騎士“人形使い(マリオネットマスター)”のクリストファー=ベルナードです」

アルジェント:「天剣の言っていた男か…どけ!邪魔をするのなら貴様から潰すぞ!」

GM:殺意をあらわにする君とは対極的にクリストファーは落ち着き払った様子で自己紹介をする。
そしてディゼル―――君はこの人物の事を知っている。

ディゼル:「お前…!」
今朝の夢に出た男に限りなく似ているその顔に殺意が湧きそうになる。
(あの夢が現実で、俺の記憶が虚偽ならこいつは…)

GM:そう、君はこの男を見た瞬間、戦慄が走る。クリストファー。君はこの男と“会っている”
「やあ、ディゼル君。君に対しては久しぶりって言ったほうがいいかな?元気にしてたかい」
まるで数年来の友達に会うように彼は君へそう語りかけてくる。
ちなみにもう一つ情報を与えておきますと、このクリストファーの顔立ちは君の“親友”
リックの顔立ちと似ている。

ディゼル:「やっぱり、夢のほうが正しかったってことかよ…。
あんたが…あんたが村を消したって言うのか!」
そう優しそうに話しかけてくるクリストファーへ敵意を向ける。
って、ちょ!(笑)リックに似てるのか(笑)

GM:髪の色や年齢は違うが他人の空似とは思えないほど顔立ちは似ているね。
「ええ、そうですよ。目撃者は全員殺すのが一番効率的ですからね」
悪意の欠片も無く、微笑を浮かべたままクリストファーはさらりと言ってのけた。
「それはそうと“僕の人形”は君の心の支えになれたかな?
よく出来た人形だったろう“君の親友リック”は」

ディゼル:「あぁ…俺に素晴らしい嘘の記憶をプレゼントしてくれたよ…ッ!」
憎々しげに柄でもなく皮肉を言うぜ。

GM(クリストファー):「それは誤解だよ。僕は君の記憶に対して操作を行った事なんかないよ。
ただ、ほんの少し記憶の方向性に対して囁いただけだよ。
人間と言うのは不思議なもので二つの記憶があると嫌な方を嘘として隠してしまうんだよね。
都合のいい方を自分の記憶としてその過去を自分の中で補い作ってしまう」

アルジェント:くっ、こいつを<疾速>で飛び越えてシアリー様助けたい。

GM(クリストファー):「でも、その様子を見るとあの日の記憶も鮮明に思い出したようだね。
まぁ、遅かれ早かれ、いつかは気づくとは思っていたけれど…。
ふふっ、世の中には思い出さない方がいい過去もあるというのにね」
そう言ってちらりと、アルジェントを見るクリストファー。

アルジェント:こっち見んな。

GM:アル(笑)

サクス:噴いた(笑)

ディゼル:「確かに人には忘れたほうがいいことだってあるけど、
決して忘れちゃいけないことがあるんだよ――!!」
感情を抑えきれずに剣を抜きクリストファーに斬りかかろうとしてみよう!

GM:おお、ではクリストファーは君の剣を紙一重で避ける。
「おっと、危ないなぁ。意外と君はセンチメンタルだったんだね」
そしてその瞬間、アルジェント君、君の障害は消えて先に進めるようになったよ。

アルジェント:おっしゃ、ならばシアリー様のすぐ下のところに糸を撃ち込んで
その糸の上を走ってシアリー様に駆け寄るぞ。

GM:おお、ならシアリー陛下の眼前まで無事に来れたよ。
「アル!もしかして…ずっと私の事を探していたの?」

アルジェント:「申し訳ありません。私は、あなたを護ることができなかった」
そして糸が閃くと拘束が外れる、でOK?

GM:いや、残念ながら拘束は外れない。
このシアリーを絡めている鎖、またはこの十字架に何らかの力があるのようだ。

アルジェント:「くっ…!」

GM(シアリー):「アル…そんな事をずっと気にしてたの?」
君の言葉を聞いて、シアリーは少し驚いた表情をするが
「君が気に病む必要なんてないよ、だってあの時も君は私や私の王国のために必死に戦ってくれたよ!
今だって、私のためにこんな…!アルはもう十分過ぎるほど、私に対して対価を払っているよ!」

ディゼル:何に対する対価だ…。

GM:拾った恩(笑)

ディゼル:理解(笑)

アルジェント:「必死に戦っても、どれほどの力を尽くしても、護れなければ意味はありません。
それに、私が対価を払う理由は、そんなに綺麗なものじゃない…」

GM(シアリー):「…?じゃあ、どうしてアルはあんなに等価交換にこだわっていたの?
それが君の信念じゃないの…?」

アルジェント:「ただ…怖いだけなんですよ。自分が得たものを、奪われるのが怖い、
盗まれるのが怖い、失うのが怖い。だから、得たものに見合う対価を、
他の何かで支払えば奪われずに済む。そんなちっぽけな自己満足なんです。
失うことにも、そして得ることにも怯えている。
私は…俺は結局、臆病な『泣き虫アル』のままだったんです…」

GM(シアリー):「…アル…」
そんな君が見せる初めての表情、そしてその本心に驚き戸惑うシアリーだったが
すぐさま真正面から君を見て言い返す。
「ち、違うよ!アルは泣き虫でも臆病でもないよ!アルはずっと私や私の王国の為に
戦ってくれてたんだよ!レストと一緒にずっと!今も私のためにここまで来てくれた…。
それに、大事なものがなくなるのは誰だって怖くて当たり前だよ!私だって…怖いもん。
それに理由をつけて護ろうとするのもきっと、当たり前なんだと思うよ。
だって、誰だって一人で生きるのって寂しいはずだもん!
だから、そんな風に自分を貶めないでよ、アル!」

アルジェント:彼女の言葉は、どうしてこんなに心に沁みわたるのだろう。
どうしてこんなにも、自分を満たすのだろう。
「姫様…俺は…ひとつだけ、自分が得たものでないものを、心から護りたいと思ったことがあります」

GM(シアリー):「え、本当!それって、なに?アル」
それを君の口から聞くのはよほど驚きで予想外な事だったのかシアリーは君に聞いてくる。

アルジェント:「それは、あなただ」

GM(シアリー):「…え」
一瞬、その言葉の意味を捉え損ない、きょとんとした声を出す。

アルジェント:「自分のものでもないくせに、命をかけて護る。
最初はただの対価だと思った、次に自分はおかしくなったと思った、だが違う。
それはきっと俺の夢だった、記憶を失っても消えない、俺の切なる願いだった」

GM(シアリー):「だけど、私なんかをそんな…だって、私はもう王女でもなんでもないんだよ…」

アルジェント:「あなたが王女でないのなら、俺もフェザード王国の騎士ではない。
俺は、アルジェントは――」
ここであのときシアリー様に巻いてもらったハンカチを取り出し、その髪を縛る。

「――あなたの騎士だっ!――」

GM(シアリー):「…アル!」
君が始めて見せてくれた意志の強さ、想いのこもった言葉、そして抱いていた夢。
それらを眼前で見せられ、そして、いつかそれらをその口から聞きたいと願い
君を拾った一人の女性シアリー。
だからこそ、彼女は微笑みを持って君のその言葉に対して返した。

「うん、ありがとう。アル」

GM:だが――その瞬間、君達の間に一人の少年の声がかかる。

「夢が、叶ったみたいだね。“兄さん”」

“ばぢいいいいいいいいいんっ!!!”

GM:瞬間、アルジェント。君は吹き飛ばされていた。

アルジェント:「ぐあっ!!」

GM:その身体はサクス達のいる床へと叩きつけられる。
そして見る。シアリー陛下を捕らえている十字架、その真下にある王座。
そこに、いつの間に存在したのか、一人の少年が座っていた。
「あぁ、ようやく会えたね。兄さん…」

アルジェント:「貴様っ…!」

その少年の姿を見た時、アルジェントを含む全員が戦慄をする。
少年の顔の左半身、そこにはひどいやけどの跡が凄惨なまでに刻み付けられていた。
だが、それ以上に彼らを驚愕させたもの。
それはその少年が持つ髪、顔立ち、雰囲気。
それら全てが――アルジェントと瓜二つだという事。

「一応、全員に挨拶しておくね」

一拍置き、少年は宣告する。

「僕が現アヴェスター教会の指導者にして
聖十騎士団・第一騎士“聖典(アヴェスター)”ライン=セントへレンだよ」


GM(ライン):「あぁ…長かったよ、兄さん。やっと会えたね…」

アルジェント:「ライン…やはり生きていたのか…」

GM:ラインと名乗った少年は君と再会出来た事に歓喜の表情を浮かべて王座より立つ。
「うん。この通り、なんとかね。けど左半身はあの時の火で焼けちゃってさ。
ひどいだろう…これ、ははは」
そう言って焼けた傷のある左の顔を手で指す。

アルジェント:「何のつもりだ…ライン…」

GM(ライン):「何のつもり?」 キョトンとしてラインは聞き返す。
「儀式だよ。兄さんのための…母さんの願いを叶えるための儀式だよ」
そう言ったラインはマントを翻す。
それに反応するようにこの場にいた聖十騎士団のレスト、クリストファーが静かに跪く。

アルジェント:「儀式だと?!俺から、人々から、多くのものを奪って、それが儀式だと言うのか!!」

GM(ライン):「兄さん。どうやら兄さんには少し誤解があったみたいだけど、
このアヴェスター教会は兄さんの敵じゃないよ。
いいや、むしろ…この教会は“兄さんの物”なんだよ」

アルジェント:「何だと?!何を…何を言っている!!」

GM(ライン):「そこの君…指輪を持っているディゼルとか言ったよね?」
そう言ってラインはディゼルを指す。だがディゼルを見るラインの目は
アルジェントを見ていた時のそれとは違い虫けらを見るような目だ。

ディゼル:ひどい(笑)

GM(ライン):「君は指輪に選ばれてこの地で“王の力”を継承しようとしているみたいだけど…。
残念ながらそれは出来ないよ」 ハッキリと断言するライン。

ディゼル:「…君のお兄さんが王の力を継承すると言いたいのかい?」

GM(ライン):「その通り。理解が早いね」
君のその言葉に対しラインは満足がいったように続ける。
「そもそも“王”の力とは何だと思う?それはその名の通りに“この大陸を総べる王”の力って事だよ」

「ではこの“大陸を総べる王”とは誰か」

言って高らかにラインは宣言する。

「それは僕たちの母さんベアトリーチェ。
そう、兄さん!兄さんこそが僕たちの母さん!
『眠りの皇帝(ヒュプノプス・カイザー)』の力を継承する“王”の資格を持つ人物なんだよ!」

そして真実と共にラインは王の正体を明かす。

「眠りの皇帝を継ぐ者、それが―――兄さん、アルジェントだよ!」


 
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