第4章 滅びゆくもの

◆PC2オープニング2 〜滅びゆくもの〜
GM:そこは戦場。君はフェザード王国の国境近くの防衛線で多くの敵を倒していた。
向ってくるのは隣国の騎士、だが、彼らの背後にあるのはアヴェスター教会。
この戦場にもアヴェスター教会の騎士や兵達が多数存在した。

アルジェント:戦場を駆け抜け、その糸を撃ちこみ、敵の部隊を分断する。

GM:君はその戦場でまさに一騎当千の活躍をしていた。
だが、もともと数の差が半端ではなかった。
いくら一人の英雄の活躍があっても、この圧倒的戦力差を簡単には覆せなかった。

アルジェント:「きりがないな…これは…」
敵の頭上を飛び越え、銀色の雨のように地上に糸を撃ちこみながら言う。

GM:やがて、君の活躍で何とか持ちこたえていた防衛線だったが。
その防衛線にやってきた城からの使いと言う兵の報告を聞き、状況は愕然となる。
「あ、アルジェント様!大変ですっ!!」

アルジェント:「どうした」

GM(兵士):「し、城が…!城が…!」と兵は慌てた様子で、その尋常ならざる事態の報告を行う。
「フェザード王国の王城が…陥落いたしました…っ!」
それはまさに最悪を越えた事態の報告だった。その報告を聞いた周りの兵たちも動揺し
防衛を維持していた彼らの脳裏に絶望の二文字が刻まれる。

アルジェント:(姫様ッ…!)
真っ先に浮かぶのは彼女のこと

GM(兵士):「アルジェント様!この場は私たちに任せ、貴方は城へ…!」

アルジェント:「…俺がここを離れればすぐにでも崩されるぞ。お前にはその覚悟があるのだな?」

GM(兵士):「無論です。私は以前、貴方に命を救われました。
貴方はお忘れかもしれませんが、私は貴方の為にもその恩に報います。
何よりも私が尽くしてきたこの国ため、女王陛下のために!」

アルジェント:「お前もまた、”命一つ分の働きをする”ということか。わかった、ここは任せる」
そして取り出したのは空間水。これならば一瞬で城まで行ける。実は買ってたのです。

GM:OK!では君は即座に城の中へ転移しました!
だが城の中に入ると同時に愕然とする。そこはすでに無数の兵士達の死体で埋め尽くされていた。

アルジェント:「姫様っ!」叫び、走る。

GM:君は走る。王座の間、女王陛下・シアリーのいる場所へ。
扉を開いた先、そこにいたのは――レスト。
そして彼の腕に抱かれ気を失っているシアリーの姿だった。

アルジェント:「姫様っ!」

GM(レスト):「…シアリー陛下なら無事だ。気を失ってるだけだ」
レストは君を見て、そう冷静に返す。

アルジェント:「どうやら、最悪の事態だけは回避できたようだな」

GM(レスト):「いや…、ところがそうでもないんだよ」
少し、困ったようにレストは君を見る。

アルジェント:「どうした?」一気に警戒するぞ。

GM(レスト):「悪いな、アルジェント。シアリー陛下はオレ達が頂く。」
オレ達――“アヴェスター教会”がな」

アルジェント:「何を言っている!!」奴に糸を飛ばす。

GM(レスト):「おっと」
レストは君が放った糸を瞬時にかわした。その動きはあの時、君と戦った時よりもはるかに鋭く速い。
「…そう言えば、お前には謝らないといけないな。御前試合では悪かったな、
あんな手を抜いた真似してよ。姫様の言う通り、わざと負けるなんてやっぱらしくなかったよな」

アルジェント:「…そうか、俺と戦ったときは三味線弾いてたというわけか。
俺を防衛線に送り込むために」

GM(レスト):「まあ…そう言う事だな。さすがに察しがいいな」

アルジェント:「俺がいなくなればこの国で最強の騎士はお前だ。
攻めるも守るもアヴェスター教会ならばどうとでもなる」

GM(レスト):「正直、オレ個人としてはこういう真似はあんまり好みじゃないんだが
上からの命令だったんでな」

アルジェント:「だが、はいそうですかと大人しく渡すと思うか…?」

GM(レスト):「そうだな、お前はそんなお人好しじゃあないな」
そう言ってレストはシアリーを降ろし、二刀を構える。
「いいぜ。それじゃあ、あの時の決着を。ここで付けるか」

アルジェント:「お前はここで、終わらぬ悪夢を見続けるがいい!」
そう言った瞬間、アルジェントの両腕から幾多の糸が襲いかかる。

GM(レスト):「聖十騎士団・第六騎士“輝く者(スキールニル)”レスト=カヴァール。
それがオレの称号だ。…アルジェント、お前じゃオレには勝てないんだよ」
そう宣言すると同時に、レストの持った二刀が眩い光を放つ!
それはまさに瞳を潰すほどの白き閃光!それはこの空間全てを包み、全てを白く染め上げる!
そのあまりの眩しさ、全方位から入る光を前に君の瞳は視覚0となる。
いや、こんな状況で瞳を開けられるわけもない。それはまさに輝きによる盲目状態。

アルジェント:「なっ…?!」

「どんな達人であろうとも、このオレの輝きの空間では、オレを捕らえることは――」

“ずばあああああぁぁん!!”

刹那、アルジェントの肩に入る鋭い痛み。

「――できない」

アルジェント:「ぐッ?!」

GM:何の反応もできなかった。この視覚0の空間はまさにレストの空間。
君は致命傷を負ったまま、その場に斃れる。

アルジェント:うお、一撃で終わりか。

GM:イベントだし(笑)。とその時、君の胸にあったペンダントが音を立てて落ちる。
そして、その中身を偶然見たレストは驚きに息を呑む。
「…そうか、アルジェント。お前が…そうだったのか」
そんな、何かを悟ったようなレストの声。
「聞け、アルジェント。お前の弟は――生きている」

アルジェント:わずかに残っている意識を向ける。(なん…だと…)

GM(レスト):「オレ達アヴェスター教会はお前の弟がいる場所を知っている」

アルジェント:(俺の弟…?こいつらは…俺の失った過去を…知っているというのか…)

GM(レスト):「アルジェント。お前がもしも、シアリー陛下を助けたいなら、
弟がどこにいるのか知りたいなら。そして、お前の失われた過去を知りたいなら…
オレ達、アヴェスター教会、聖十騎士団を追うことだな」
言ってレストは再びシアリーを抱き上げ君に背を向ける。
「待っているぞ、アルジェント。再びお前と刃を交えるその時を――」

アルジェント:指一本動かない。力を使うほどの集中力も出せない。
だがまだ死んでいない、俺の意識は消えていない。
ならばできることがあるはずだ、やれることがあるはずだ。
喉の奥から、心の奥から、魂の奥から、命の奥から、たった一つの言葉を絞りだす。
レストの空間で見えなくなっていようと、確かにそこにいる彼女に届けるために。

「シアリィィィィィィィィィ!!!!」

ただ己の全てを乗せて叫ぶ。

そして、その時にアルジェントは気づいた。
彼女と言う存在の重さに。そして、気づけなかった自分の過ちに。

◆  ◆  ◆

GM:そして、あれから数ヶ月後。
君はアヴェスター教会と聖十騎士団を探し求め、旅をしていた。
そんなある時、君が立ち寄った街で騒ぎが起きていた。その騒ぎの現場に行くと、
パン屋前の地面がまるで何の砲撃でも受けたかのように無数の穴が穿たれていた。

アルジェント:「何だ…これは」

ディゼル:おお(笑)

GM:「おい!路地の方にさっきのやばい奴らが行ったらしいぜ」
「くそ!聖なんたら騎士団だか何だか知らないが…迷惑な話しだぜ」

アルジェント:「騎士団…?」
その場を去ろうとしていたが、そのセリフにぴくっと足がとまる。そしてそれを言っていた奴を捕まえ。
「おい、騎士団とは聖十騎士団か?」と訊く。

GM:「え、あ、ああ…た、確か…そんな風な名乗りを言ってやがったな」
街人はそんな風に君へ答える。

アルジェント:「そうか」
それだけ聞くと、近くの壁を三角跳びして屋根に上る。さて、いるかな?

GM:うむ。では路地の奥のほう、それらしき男が少年と少女の前で対峙している姿が見える。

アルジェント:「奴か…」
ゆっくりと手を向ける。そして「睡蓮」
一本の糸がまるでレーザーのように男に一直線に伸びるぞ。

アルジェントの放った一閃は男へ向けて、真っ直ぐ伸びる――そして。


◆PC3オープニング2 〜使命〜
あの叛乱より18年――。
サクスは己が仕えた主と生き別れ、主達に従っていた者達もまた散り散りとなった。
叛乱の直後に起こった“敵”の襲撃により城は崩壊。
主を失い、友を失い、目的もなくただ放浪するだけの生活をサクスは送っていた。

GM:そんな現在、君はムーヴェリアス大陸の白銀の砂漠と呼ばれる。
一面銀の砂に覆われた地平線にいた。
この地はムーヴェリアス大陸においても最も美しくそして同時に死地と呼ばれる場所だ。

サクス:「王を失い殉死する事も敵わず、何もかもを失った俺には相応しい場所か…」
辺りを見回しながら呟きます

GM:その地で、何をすることもなく、あるいは君自身、生きる希望を失ってか、
そんな枯渇した瞳で地平を眺めた時、ふと君に声を欠ける者が現れる。
「やあ、サクス。こんな場所で何しているんだい」
それは聞いた声だった。18年前に君と共にあの叛乱を戦った同胞、君と同じ主に仕えた者の声だ。
見ると君の背後にその男は立っていた以前と全く変わらない姿、容姿、制服をして。

サクス:「……貴様」

GM(???):「あはは、そんないきなり怖い顔を向けないで下さいよ。
18年ぶりに再会した親友同士じゃないですか」
男は笑いながら君の気迫を受け流すように続ける。私事だが、君はどうもこの男が苦手と言うよりも
どこかが気に入らなかった。

サクス :「本当に…久方ぶりだな。
お互いの環境は何もかもが変わってしまったが、人間はそう変わらないものだな」

GM(???):「そう?まぁ確かに君は随分変わったみたいだね。
何ていうか、前は戦士として壮観としていたのに今は何だか少し…落ちぶれたように見えるよ」

サクス:「俺を?どういう事だ。流浪の身のこの俺にわざわざ会いにきた用は何だ。
主亡き今、俺は生ける屍と同じだ」

GM(???):「はは、やっぱりその様子だと知らなかったみたいだね」
男は君のその様子を見て笑うように用件を続ける。

サクス:「?何がおかしい」

GM(???):「サクス。戦いはまだ終わっていないよ。いや、今も続いている、と言った方がいいかな」

サクス:「キングがいない状態でチェスが続けられると思っているのか、貴様らは」

GM(???):「そうだね。確かに18年前に僕達が奪われたものは大きい。
だけど、それが“帰ってきて”いたら…どうする?」

サクス:「…どういう事だ?冗談にしてはあまりに面白くない話だ」

GM:君のその疑問に対し男は静かに手のひらに魔力を生み出す。
やがてそれは君と男を包み込み、その場全てを包む。
次の瞬間、君がゆっくり瞳を開くとそこは荘厳なる聖堂だった。
眼前にあるのは強大な十字架。天井からは神々しき光が降り注ぎ、そこはまさに神聖不可侵なる居城。

サクス:「…これは」

GM:そして、サクスは気づく。自分の正面、その先にいる玉座に座っている一人の少年の姿が。
見ると君をここへ転移させた男はすでに君の隣で肩ひざをつき跪き、
その人物に対する忠誠を露にしている。「サクス、あの御方の顔を…よくご覧――」
隣で跪く男はそう君へ囁く。

サクス :「??」言葉に従い、目を凝らします。

GM:言われるがまま見た君は理解した。
なるほど。これが先ほどこの男が言った事の“答え”か、と。

そう、その少年の素顔はかつて君が従った―――。

サクス:「……ああ、あああ……そんな、馬鹿な。貴方が何故、ここに?」

GM(王座に座る少年):「…君がサクスだね。話しは色々聞いているよ。
君の疑問に対して答えてあげたいのは山々なんだけど、
生憎と僕達には時間の猶予はそれほどないんだ」少年は気だるそうな口調を開き応える。

サクス:「……はっ、し、失礼しました」無精髭を気にしつつ、その場に敬服します。

GM(王座に座る少年):「僕の姿を見て、もう分かっているとは思うけど、
僕が現在の“君達”の指揮を執っている。
他の連中にも相応の任務を与えているんだけど…サクス、君には特別な任務をこなして欲しいんだ」

サクス:「はっ、それは当然の事です。今も昔も、我々の忠誠は色あせなどしない。
なんなりと、我が主」

GM(王座に座る少年):「そう、良かった。じゃあ、早速任務を伝えるね――」

そうしてその少年の口より、君へ課せられる任務が伝えられる。

GM(王座に座る少年):「―――と言うわけなんだ。了承できるかな?」

サクス:「はっ、一も二もありません、我が主。我が一切の生殺与奪を貴方の手に」

GM(王座に座る少年):「ふふっ、ありがとう、サクス。
君に与えられた任務は特別で“全てにおいて君の行動が優先される”
もしも任務の妨げや妨害となる者が存在すれば“例外なく排除”して構わないからね」

サクス:「はっ、心にしかと留め置きます」

GM:少年のその宣告を受け、君はゆっくり立ち上がる。
そう、全ては18年前より止まっていた自らの使命を果たすために。

サクス:「本当に、良かった…」右目を伝う涙を拭いながら歩いていきます。

自らの生き甲斐、果たすべき使命を取り戻しサクス=一刀は再び剣を取る。
だが、この時、彼は知らなかった微笑む自らの主とは別に
もう一つの笑みを浮かべる存在がその場にいたことに。

今、止まっていた歯車がゆっくりと動き出す。
全てはデウス・エクス・マキナの運命を辿るために―――。


 
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