第28章 彼が選んだ『答え』

死の淵でフィリアは思い出す。

幼かった自分。その自分を大切にしてくれた実の父。
そして、その父を殺した真紅の剣士。

父を失った君を拾ってくれたシュヴァルスト。彼の下にリザベラと生きる日々。
そしてある時、シュヴァルストが君へ贈った言葉。

「リザベラ。私は剣を求めている」

「それは意思の無い人形ではない。己の意思を持ち、戦うべくを知る強き剣」

「―――フィリア」

「いつか、お前ならば到達できるかもしれない。
己の戦うべき理由を知る剣の果て―――剣祖の領域へ」

一方、エデン帝国・シュヴァルストの部屋。
眼下の大地を見つめながらシュヴァルストは呟く。

「フィリア。今のお前ならば…戦いの理由を見い出したお前ならば辿り着けるはずだ。
かつて“剣祖”と言われたガイン=デュラールがその死期に到達したという、剣の…最果ての領域」

「【心眼剣】に」

瞬間、フィリアの意識は現実世界へと―――戻った。

◆   ◆   ◆

GM(アドル):「―――――?!」
君はゆっくりと立ち上がる。そして、気づく。
先ほどの一撃で視覚を奪われていることを。それは何も見えない暗黒の世界。
だが、不思議と―――全てが『視える』

フィリア:「……何故だろう」

GM:空気の動き。傍いるセレナス、イオスの鼓動、存在。
そして、目の前の敵…アドルが次に『どう動くか』『どう避けるのか』
その『未来の動き』が―――分かる。

フィリア:「……視える。闇の中、全てが」

GM(アドル):「…まさか…フィリア、お前は……」
アドルは今までに無い緊張した表情をフィリアへ向ける。
瞬間、アドルはその真紅の斬撃を君目掛け放ったにも関わらず
すでに、君の姿はそこには無い。アドルの真横に移動していた。
「―――到達したというのか」

フィリア:「すでにお前の動きは、視えていた。妙な感覚だ、現在と未来が、同時に視える」

GM(アドル):「……面白い」
それは今までアドルが見せたことのない高揚感に満たされた戦士の表情。
「かつて剣祖が死の間際に体得したという領域、それを手にした剣士が今、目の前にいる。
いいだろう!ならば、俺も俺の全力を持ってお前の『剣』を倒そう!フィリア=クーへ!!」

フィリア:「…もう、思い出す必要がないんだな。
私には色が分からない。翼の色を思い出す必要はない。
ここにきて、ようやく吹っ切れた。…アドル。お前の生死に興味はない。
少しだけ先を視るこの眼で、未来を視てみたくなった。アドル、私も貴方を全力で迎え撃とう」

「迎撃の用意は出来ている。覚悟も完了だ」

そして心眼の領域へと踏み込んだ剣士と、人為の呪いを埋め込められし剣士の宿命の対決は
遂に最終局面を迎えた。

<心眼剣> タイミング:セットアップ 対象:自身 射程:− 消費精神:7
貴方はこのターンのあらゆる判定のクリティカル値に-1をする。
また貴方へ対して行われる「絶対命中」の攻撃を「絶対回避」する。

<心眼剣・静の剣> タイミング:命中判定後 対象:自身 射程:− 消費精神:3
心眼剣発動中にのみ発動可能。
貴方の攻撃が外れた際、貴方の攻撃を避けた対象へ即座に2D10の実ダメージを与える
(この判定はジャッジとしては扱いません)。

<心眼剣・動の剣> タイミング:命中判定後 対象:自身 射程:− 消費精神:3
心眼剣発動中にのみ発動可能。
貴方の攻撃が命中した際、貴方の攻撃を受けた対象は防御値による判定を行えない。

<心眼剣・飛燕返し> タイミング:本文 対象:自身 射程:− 消費精神:5
心眼剣発動中にのみ発動可能。
貴方は対象の攻撃を避けた際、即座に攻撃を仕掛けた対象へ「絶対命中」の攻撃を仕掛ける。
ただし、この時の攻撃判定でクリティカルは発生しない。

<心眼剣・鶺鴒返し> タイミング:本文 対象:自身 射程:− 消費精神:5
心眼剣発動中にのみ発動可能。
貴方が1点以上のダメージを受けた際、即座に対象へ対して
「現在装備している武器の攻撃力+2D10」の攻撃判定を行う。
この時、対象は防御値を半分(切り捨て)にして判定をすること。

心眼剣の取得により、[戦闘不能]状態から完全復活を果たすフィリア。
更に心眼剣特技の取得により、能力が増したフィリアはすかさずセットアップで《覚醒》を使用。
基本能力値を底上げし、更にアドルを対象に<一騎打ち>の宣言を行なう。

フィリア:「イオス、セレナス。これは私が果たす戦いだ。少し、待っていてくれ」 行動は52。

イオス:「お前がそう言うなら止めはせんさ」 構えていた刀をゆっくり下ろそう。

GM(アドル):「一騎打ちか…。いいだろう、受けてやろう、フィリア」
アドルはその宣告を受諾。そしてこちらの行動値は46ですので、そちらの先行でどうぞ!

フィリア:アドルに通常攻撃。え〜と、心眼剣の効果でクリティカル値が10と9ですので……
合計して命中86ですね。

GM:当たりです(笑)

フィリア:無論<心眼剣・動の剣>を。

GM:では、今まで強固な守りの構えを取っていたアドルだが、今の君には
そのアドルの構えに存在するわずかな隙すらも心眼により捉える事が出来る。

フィリア:「視える……お前の守りの隙間が視える」
ダメージは……ダイス目が奮わないな、68点です。

GM:「ッ―――なにっ!」
完全に死角をつかれるアドル。その一撃を受け彼の腕に傷が入る。
「…もはや、俺の防御の構えはお前には通じないか。フィリア」

フィリア:「無彩色の世界ではな」

GM:「よかろう。ならば、俺は全てを攻撃へと注ごう!」

この後、アドルの<瞬速斬>による太刀をフィリアに命中させるも
フィリアの脅威のクリティカル防御によりダメージを完全に打ち消す。

続けてのターンでフィリアは更に《覚醒》と<心眼剣>を使用。
それに対抗するようにアドルもまた《覚醒》を使用。行動値の結果、フィリアはアドルの後手となる。

GM(アドル):「ならば――これならどうだ!フィリア!」
<烈火の魔刃>をメジャーで使用!命中72!

フィリア:HPを半分にするやつか。

アドルの魔の刃を受け、生命力が半分になるものの<心眼剣・鸚鵡返し>を放つフィリア。
しかし《覚醒》の入ったアドルにはそれでは致命傷を負わせる事は出来なかった。
だが反撃となったフィリアのターンにて攻撃を命中させ<心眼剣・動の剣>により
再びアドルに傷を負わせる――が。

フィリア:「その防御、視切った」

GM:“ずばぁぁんッ!”と君の一閃はアドルの胸を切り裂く。そこから血を滴らせるアドルだが
彼が纏う雰囲気、戦士としての威圧感は最初と対峙した時よりほとんど衰えていない。
「…さすがだな。だが、一つ教えてやろう。フィリア。
今の攻撃で…俺の生命力はようやく半分だ。このままで俺を倒すことができると思うか?」

フィリア:うわー。「五分と五分。その事実だけだろう」

続けて、アドルのアクセラレーションによるターン最後の再行動。
アドルの命中58に対しフィリアの回避56という僅差で命中。
もはや完全に全力を出してきたアドルは手加減をする事なく<鎧砕き>を使用。
攻撃76点を前にフィリアは防御66でガードをし、10点のダメージまで抑える、が。

フィリア:HPあと14。死にそう。

GM:厳しい戦いになって来たな(笑)

イオス:マジで大丈夫なのかこれは…。

フィリア:戦略ミスった。オーヴァーロードしとくんだった。
(オーヴァー使用まで必要なFPは5。現在のフィリアのFPは2である)

この後、再びターンの最初となり、フィリアは何とかしてFPを5点まで入手する戦術へと切り替える。
そして行動判定で早速フォーチューンポイントを1点入手したフィリアは行動値61を誇り
行動値46のアドルを上回る。

フィリア:ハイヒーリングポーションをマイナーで使います。
…惜しい、出なかった。15点回復。次にメジャーで通常攻撃。
4・9・2・10でクリット二つ。んでフォーチューン。追加は3・6で命中61。

GM:当たりです!威力をどうぞ!

この後、フィリアの攻撃により再びアドルにダメージを蓄積される事に成功する。
そしてアドルの反撃が放たれ、回避に失敗したフィリアだったが防御判定で
クリティカル&フォーチューンゲットにより、ダメージを完全に抑えた上でFP5点を遂に溜めた。

GM:では、ターンを最初に!アドルの行動値は41です!

フィリア:何も使えないぜ!覚醒使ったらマジで終る!行動値は30。

GM:ではアドルの行動からいきます!

フィリア:来るがいい!当方に迎撃の用意アリ!

GM:ではその瞬間、彼の右腕より生えた真紅の剣が禍々しい闇を纏う。
「―――終りだ、フィリア。今度こそ、これで再び眠りにつかせてやろう」

イオス:まさか…。

セレナス:ここでー?!(笑)

GM(アドル):「―――《死の一閃》!!!」
<居合い>を組み合わせて!絶対命中!

フィリア:あたるぜ。

イオス:心眼剣使用してないから回避できんな。

フィリア:ダイスすら触れずにHP0だぜ。

GM:しかしアドル自身も死の一閃のデメリットとして口から血を零す。

フィリア:「……《オーヴァー……ロード》」

その真紅の剣を受け、再び斃れしフィリア。しかしその瞬間、フィリアの体から
衝撃波と光が同時に発生する!

フィリア:フィリアの背から光の翼がその姿を広げ、存在を誇示する。
その翼の色は、フィリアには分からない。「……懐かしい感覚だ」

GM(アドル):「……フッ」 アドルは光の翼を生やした君を見て笑みを漏らす。

フィリア:「セレナス。私の背中に、何がある?」

セレナス:「綺麗な、翼、が―――」

フィリア:「色は……いや、ありがとうセレナス。その言葉だけで十分だ」

GM(アドル):「…確かに美しい翼だ、フィリア」
セレナスの言葉を継ぐようにアドルもまたそう言う。
「だが、それだけでは無いな」 言って彼は再びその真紅の剣を君に向け構える。
「さあ、お前の本当の力――見せてみろっ!!」

フィリア:「あぁ、見せてやるとも――私を、私の力をっ!!」

遂に解禁されし《オーヴァーロード》。その効果によりフィリアの全戦闘能力値は2倍となり
[戦闘不能]状態からも全回復で復活。そしてすかさずフィリアのターンとなる。

フィリア:つっても通常攻撃しか出来んけどね。チャージすらできん、MPが1なんだ…。

イオス:次のターン、再生法でちまちま回復するしかないなぁ。

フィリア:1・4・8・9のフォーチュンゲット。命中は77です。

GM:当たりです!威力どうぞ!

フィリア:2・5の75点ッ!

GM:おおー、何の特技もなくそこまでの威力を出すとはさすがはオーヴァーロード(笑)。
では、その一撃にはアドルも確かなダメージを負う!「…ぐっ!!」
剣の衝撃を受けきれず、僅かに後ろへと吹っ飛ぶが、すぐに体勢を立て直す。

そしてターンは最初へと移行し、アドルは行動値41、フィリアは行動値61となった。
MP回復の為にフィリアはソニックドライヴ《再生法》を使用し、MPを6点回復させる。

フィリア:メジャーで<チャージ>!さらに翼の出力が上がる!

GM:おお、なるほど!それはいい判断かも!ではアドルの行動いきます!

フィリア:来るがいい!

GM:まずは<居合い>で攻撃を絶対命中化!そして――
「お前のその翼を折るには俺の全てをぶつけなければならんようだ。
ならば見せてやろう!俺の全てを込めた正真正銘最後の必殺の一撃をッ!!!」

フィリア:「私の翼は、もうお前には奪われんッ!!」

GM:まずは<鎧砕き>と<オーヴァーアタック>を使用!
さらに最後の切り札<王なる一撃>を使用!

<王なる一撃> タイミング:ダメージロール直後 対象:自身 射程:- 消費精神:12 取得レベル:5
あなたの行なった攻撃判定のダイスを全て振り足しをさせる。一シナリオ一回使用。

GM:正真正銘、最後の一撃をアドルは放つ!!

フィリア:えーと、半分だから……防御は30スタートか。

GM:ではまず、こちらの攻撃の宣言行きます。攻撃96点です!

フィリア:高いなぁオイ!こっちは…2・7・0、がんばれ緑10面ダイス!……9!
防御58か、38点ダメージ!HP残り11!

イオス:セーフ!

GM:生き残った!(笑)
「―――受け切ったか……フィリア……俺の最後の一撃を―――」
そう目の前で呟くアドルの真紅の髪からは先ほどまで感じられた恐るべき
戦気が徐々に衰えている事がハッキリと分かる。

フィリア:「――斃れるわけにはいかないからな」
次のターンで終らせる。

GM(アドル):「…そうだな。お前はここで斃れる存在では――無い」
では!ターンを最初に!

フィリア:フォーチュンアビリティ、《覚醒》!……出目ひっく!1・3・4で、8上昇。

イオス:ここにきてそれかい。

GM:ちょ、酷すぎる(笑)。あ、ちなみにアドルは行動値47です。

フィリア:行動値は66です。再生法の余裕は無い、このターンで決める。通常攻撃!命中84!

GM:当たりです!

フィリア:ダメージは出目が計7、攻撃値が76、行動値は46、チャージの効果で行動値を足して…
全部足して、129だっ!

「これで――ッ!」

刹那。

“ずばああああああああんっ!!!”

フィリアの放った攻撃はアドルの右腕より生えし真紅の剣を切り裂き
そのまま彼の身体をも切り裂く。

「――――――」

声もなく、アドル=ローベンはゆっくりとその場へ――斃れた。

フィリア:「……とぉ、さま」
血振りをし、剣を鞘に収める。――ちきんっ。

◆   ◆   ◆

イオス:すげえ!勝った!

セレナス:やっちゃっちゃよ…。

フィリア:勝っちゃったよ…。ギリッギリだった…。

GM:では、確認です。先ほどの最後の一撃でアドルを「殺す」事を選択しますか?

フィリア:どうしようね。

セレナス:らめええぇぇ。

フィリア:冗談。もう聞かなくてもいいでしょう?「殺さない」一択。

GM:OKです。では――!


◆ミドルシーン8 〜彼が選んだ『答え』〜
GM:純白の雪原にて紅い染みを作り、その中心で倒れている男、アドル。
彼はゆっくり顔を上げ、フィリアを確認して言葉を放つ。
「―――なぜ、殺さなかった」

フィリア:「死にたかったのか?」

GM(アドル):「俺はお前の…仇だろう。ならば、それを討て…――」

フィリア:「…一つ聞こう。私の父は、外道だったか?」

GM(アドル):「…知ってどうする」

フィリア:「外道なら仇の理由はなくなる。お互い様だからな。
まともでも……やはりもう理由はない。顔も声もどんな男だったのかも覚えていないからな」

GM(アドル):「……フィリア」

フィリア:「私には良い父だったんだろうな。そうでなければ、10年以上も復讐を胸に抱くことはできん」

GM(アドル):「――そうだな、彼は最後の瞬間、己の命より娘であるお前の命を選んだ…。
良い父…それだけは間違いないだろう…」

フィリア:「良い父か……。どちらにせよ、もういないからな。どこにも」

GM(アドル):「――フィリア」

フィリア:「なんだ?」

GM(アドル):「――すまなかった…」

フィリア:「謝る必要はない。お前が自由を勝ち得るための選択だ」

GM(アドル):「…ははっ、お前はいい奴だな、フィリア」

フィリア:「謝れば自分の非を認めることになる。お前が自由を与えた他の者達にも失礼だ。
他にも実験体はいたんだろう?あのテナとかいう娘とか。彼らの自由は、まちがいなくお前のお陰だ」

GM(アドル):「…自由…ああ、そうだな…。――ありがとう、フィリア。
お前に会えて本当に良かった」

フィリア:「私もだ。お前に会わなければ、ずっと憎悪を抱いたままだったろうな」

GM:「―――セレナス」
名を呼びアドルはセレナスの方を向く。

「―――テナを頼んだぞ」

そう、彼が言い終えた瞬間。

“ずばんっ!!!”

血が、舞った。

セレナス:「―――?!!」

フィリア:「―――!!」

GM:アドルは自らの剣でその胸を貫いていた。「――――ごぶっ」

フィリア:「アドル、お前…」

GM(アドル):「……『答え』…だ。俺が見い出した……『答え』……」
彼は血を吐きながらもゆっくりとそう語る。

セレナス:「アドルさん!!テナは、テナは貴方の事を……!!」

GM(アドル):「…セレ…ナス…」
アドルは瞳を動かしセレナスを見る。
「―――『心臓』…だ」 ぽつりと、だがハッキリと聞こえるようにアドルは宣言する。
「俺の…『心臓』には……先天的に…【魔王の呪い】に対する対抗があったんだ…」

セレナス:「……まさか……まさかアドルさん、それで!」

GM(アドル):「だからこそ…俺だけが唯一の成功例として…施設での…薬の投与や…
…魔族からの補給も…必要ない…。俺のこの『心臓』から…テナへの【魔王の呪い】に対する…
免疫を、作れる…はずだ…」
そこまで言ってアドルはいつか見せた優しい笑顔を君へ向ける。
「……テナは助かるよ…セレナス……」

セレナス:「そんな、哀しすぎるよッ!!」

GM(アドル):「いいんだよ、これで…それに――俺はようやく俺の望んだ『正義の味方』になれた――」
言ってアドルは空を見上げる。その瞳には何の迷いもない、澄み切った色が映っていた。
「誰か(他人)を傷つけずに誰か(テナ)を救うという、『正義の味方』に―――…。
こんな簡単なことだったのに…随分、長い時間が掛かってしまったがね…ははっ……」

セレナス:「アドルさん、アドルさん!僕は、僕は……ッ!」

フィリア:「…それは、違う。逃げでしかないではないか!その、誰かにおまえ自身は入っていない!!
ようやく、昔の私を知るお前に会えたのに。また、お別れか?」

GM(アドル):「……フィリア―――」
それは彼に取って思いもしなかった台詞だったのだろう。自分を仇として追っていた少女から出た
その言葉に彼は驚きの表情を見せるが、やがてこれまで見せた事のない優しい笑みへ変わる。
「……そうだな。この誰かに『正義の味方』自体は…入ってはいない……」

フィリア:「アドル――」 やー、ごめん。つい。介入しちゃった。

GM(アドル):「―――フィリア。セレナス」
流れる血は止まらず、もう彼の命は消える。その寸前に彼は二人の名を呟き、そして――

「もし、俺とテナの運命が違って…お前たちと出会っていたのなら……。
―――きっと…………」

「――――――――」

GM:彼が最後に呟こうとした言葉…。それは、その口からは紡がれる事は無かった。

フィリア:「アドル――ッ」

セレナス:「あ、ああ、あああああああああぁぁぁ!!!!!」

GM:正義の味方に憧れ、その道を歩もうとして歩む事の出来なかった孤高の剣士が最後に辿りついた
正義の味方としての死に様。それを持って彼は自らの命に終わりを告げた。

フィリア:あどるがしんだー!

セレナス:「アドル、アドルさん、なんで、なんで?!誰かの為に命を注ぐ…!
それは叔父さんと同、じ、だけど、だけどこんなことはもう沢山だ……ッ!!」

イオス:(俺は、こいつを責められない…。俺がこいつで、テナがセクエンツィアだったら
俺はきっと同じことをした…) ただ、ギリッと唇を噛む。

GM:「…それがそいつの選んだ道ということか…。」
その時、不意に君達の後ろから声が掛かる。そこにいたのはロトゥス。
「そいつの命―――その選択を無駄にしないためにも。お前達はこの戦い、生き残れ」

フィリア:「…ロトゥス。頼めるか?私と、セレナスとイオスはやることがある」

GM(ロトゥス):「…任せておけ。『アドルの命』をあの娘―――テナへと届けよう」

セレナス:「―――ぐすっ。すっ、すっ………」

フィリア:「セレナス、お前は泣くべきではない」

セレナス:「…うん、よろしく、お願いします。これでテナが救われなかったら
それこそ、アドルさんが報われない……」

フィリア:「――セレナス、一つ頼みがある。
アドルのために謳ってくれないか?アドルの魂が、テナに届くように」

セレナス:「…うん。僕は詠います、貴方の為に、アドルさん、他でもない貴方の為に―――」

セレナスの静かな、そして美しい歌。それは天へと届く、レクイエム―――。

「ああ、夕暮れが訪れる 遥か海のかなたから人は家々の明かりのもと眠る
呪いと暗闇に閉ざされた心を背負って何処まで行こう 本当は全てわかっていたのだ
悲しい記憶を背負いし者の名はアドル、海の向こうの見知らぬ街を照らす夕日は
幽霊でさえ知らない美しい世界の断片―――」

GM:やがて、フィリアさん。君の前に来たロトゥスがアドルの己の命を絶った剣を君へと渡す。

フィリア:「アドルの剣か」

GM(ロトゥス):「…お前が受け取るべきだろう。彼の命はテナへ。そしてその魂はお前へ。
それがあいつにとっては一番の事だろう」

フィリア:「受け取ろう。父の過ちが生み出した悲しみを」

セレナス:「うん、きっと、アドルさんも喜んでくれるはず」

アドルの剣 武器レベル3 重量5 命中修正-1 攻撃修正+21

そうして、イオス達はゆっくりと眼前を見る
その先にあるのは―――死の王の居城。

イオス:「前を向け。まだ、守らなければならない人は大勢いる」

フィリア:「前に死の王。後に民衆。未だ来ない時のために…」

セレナス:去り際にアドルさんの髪を一房貰って、手のバンドに縫いこみますね。
「―――アドルさん、敬虔なる、“正義の味方”。
そして僕にとって掛け替えのない、他人の為に戦う、騎士―――僕は貴方の生き様を、超えたい」

GM:セレナス君が激かっこいいっ!(笑)

フィリア:決めるときは決める男だ。

そして、最後の決意を胸に―――イオス達は遂にそこへ赴く。

銀の大陸フォブリアに降臨せし魔王、『死の王』の下へ―――。


◆GMシーン 〜静かなる闇の中で〜
死の王の居城。その最深部にて――。
白き造りの美しき玉座の間に死の王・レオードと彼に報告を上げるイクフォードの姿があった。

「…アドルが敗れ、その命を絶ちました」

イクフォードの報告にレオードは何の感情も湧かない声で「そうか」 と、ただ一言を告げる。

「…もうすぐ、イオス達がここへ来るでしょう。貴方との決着をつけるために」

イクフォードのその言葉を聞き、レオードは静かに玉座に座ったまま口を開く。

「イクフォード。もうここでのお前の『役割』は終わった。ここから去るがいい―――」

「…………」

その言葉を聞き終え、イクフォードは立ち上がりレオードへ背を向ける。

「…ええ、後は貴方の戦いですね…」

「ああ、そして――お前はお前の『最後の役割』を果たせ」

そのレオードの発言により、この空間にしばしの沈黙が訪れる。
やがて、沈黙の後にイクフォードは静かに口を開く。

「ええ、――それでは」

言って歩き出すイクフォード。だが、不意にその足が止まり、レオードの方へと振り返る。

「――あの!」

何を思ったのか複雑な心境を胸に秘めたかのような表情を浮べたイクフォードは
口にしようとした言葉を、しかしそのまま呑み――

「……―――いえ、なんでもありません」

やがて、誰にも聞こえないような静かな呟きを残す。

「……さようなら……――――――」

その最後の呟きと共にイクフォードの姿は闇へと溶け込み、この場より完全に消える去る。

そうして、その場には魔族達の王『死の王(タナトス・エンペラー)』
レオード=フォン=ヴァルムオンドのみが存在していた。


 
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