眠りの皇帝 後書き

このあとがきは大量のネタバレを含んでおりますので
本編を見ていない方の拝見はオススメしませんのでご注意を。

という事でエスペランサーリプレイ眠りの皇帝の物語はここに完結しました。
当初、この物語の結末は決まっており、そこに至る為の物語として開幕をしたわけですが
その道中にあった様々な出来事は、GMすら思いもしなかったリプレイならではの展開に
なったのではないかと思います。

という事で、ここでは本編では触れなかった部分に触れていこうと思います。
まず、この眠りの皇帝のリプレイの中で一番の分かれ道であり
GMすら予測不可能な展開に進んだ第二章アヴェスター教会総本山編における
アルジェントの選択。
あそこでPLには「アルジェントが眠りの皇帝の地位を継ぐ」ルートと
「それを拒否して教会を潰す」ルートの二つが存在しました。

もし、あそこでアルジェントが眠りの皇帝としての地位を継いだ場合
サクスはラインの命の下、教皇側に付き、ディゼルのみが囲まれるという
本編でも同じシチュエーションになるわけですが
ここでディゼルを助けるのは本来クリストファーの予定だったのです。
ここで、何故かクリストファーが突如としてライン側を裏切り
ディゼルを助けて逃亡を図ります。
勿論これにラインは激怒しますが、兄が自分の味方になってくれた事で
アルジェントに全幅の信頼を置いて聖十騎士団統括、教皇代理の地位をアッサリと渡してくれます。

一方でディゼルは助け騎士団を裏切り逃亡したクリストファーは、
なんと自分と協力してアルジェント・ライン率いる聖十騎士団を滅ぼさないかと誘いをかけてきます。
これについては本編をごらんになったPLの皆様には分かっていると思いますが
クリストファーに取って現在の騎士団など、三騎士(正確には己の主ヴェルトハイム)を
黄泉還らせる為の餌にしか過ぎないわけで、彼が騎士団壊滅を望んでいるのは当然ですね。
しかし、ディゼルやPLからすればこの状況はまさに訳が分からない状態で混乱をきたすと思います。
そうしてディゼルがクリストファーの誘いに乗るか、あるいは跳ね除けようとした瞬間に
砂漠越えを果たしたフェティとダグラスに止められ、合流をします。
フェティはクリストファーが騎士団の中で最も狡猾で信頼に値しないと分かっている為
ディゼルがクリストファーと組むのを阻止します。これにやむなく諦めを見せ姿を消す
クリストファーですが、彼の計画は実はここから本格始動していきます。

聖十騎士団を束ねる立場となったアルジェントですが、すぐにある異変に気づきます。
それは総本山内部にて発生した反乱。
無数の教会信者達が何故か、総本山各地で反乱を起こし
アルジェント率いる現聖十騎士団に反旗を翻し始めます。
これに対して、新たに教皇代理となったアルジェントに対する不満かとラインも思いますが
実はそうではありません。
すでに総本山にいた信者の大多数がクリストファーの魔技、あるいは巧みな話術により
クリストファー側の忠実な兵となっていたのです。
相次ぐ反乱により総本山は大きな被害を受け、アルジェント、ライン、レスト、サクスと言った
主要なメンバーを除き、アルジェント側の戦力は忠実な信者を含めて僅か数十名となってしまいます。

その後、総本山に残った現聖十騎士団を討伐すべく、クリストファー率いる
新生アヴェスター教会が攻め込んできます。
これに対して当然迎え撃つ形を取るアルジェント達ですが、その先陣にいる彼らのリーダーを見て
全員が唖然となります。
それがアルジェント達の母にして教会の真の王、眠りの皇帝ベアトリーチェだったのです。
勿論、このベアトリーチェは本編であったようにクリストファーの死体人形に過ぎないのですが
それはPLも信者も誰も知らない情報なので、この時点ではまさに
ベアトリーチェの息子達であるアルジェントやラインが母の所有物であった教会や総本山を乗っ取り
反旗を翻しているようにしか見えず、アルジェント側が一気に劣勢的状況へと追い込まれてしまいます。

とまぁ、こんな感じのストーリー展開を考えていたのですが
微塵も演出できずに終わりました(笑)
当初の予定ではここでシアリー陛下率いる軍勢がアルジェント側の味方に加わるはずだったのですが。
まぁ、ですが、ここらへんの流れが最終章の約束の地編のOPで若干組み込まれております。
ちなみに「眠りの皇帝となる事を拒否したルート」では、本編中でも触れたようにレストが
クリストファーの陰謀に気づき、シアリー様を奪還した後にアルジェント達と合流するシナリオで
ラインの後ろにいたベアトリーチェの登場もクライマックスで明らかとなる予定でした。

それと本編であまり触れられなかった部分。ディゼルの父親について補足しておきますと。
実は13年前に三騎士の反乱直後にベアトリーチェのいる総本山に総攻撃を仕掛けた
エデン軍の指揮官がディゼルの父親にして、当時のエデン最高の司令官だった人です。
彼はこの戦いでこの大陸における魔族の脅威を取り除こうとしたのですが
相手の脅威も確実に立証されてはいないのに、奇襲まがいな総攻撃に良心の呵責を感じ
戦いの後、気絶し死に掛けていたベアトリーチェを見つけ保護します。
この時、彼がベアトリーチェが魔王だという事は薄々気づいていましたが
すでに記憶を失い、ただの心優しい女性となっていた彼女を手をかける事は出来ず
エデン帝国の皇帝グレストにもこのことは伏せ、最高司令官の地位を辞職しエデンから脱退します。
その後、彼女と共に小さな村で幸せに暮らし、ディゼルが生まれて間もなく病で
この世を去ったというエピソードがあったりします。

また、ディゼルの父の弟であるダグラスさんにも、ちょっとした裏エピソードがあり
そもそも18年前の総本山における大規模な奇襲攻撃を進言したのは彼だったりします。
当時は最高司令官であった兄の最高幕僚として常に傍にいた彼は心優しい兄に代わり
情を捨て冷徹な戦略を組み立てる事で兄を支えるよう自らに課していました。
その結果、総本山における大規模な攻撃命令を実行に移させますが、その後、僅かな日を待たず
兄が司令官職を辞めた事を知ったダグラスは自分の決断が兄を追い詰めてしまったと深く後悔し
彼もまたエデン帝国を脱退し、引き篭もりのニート生活を始めます。
しかし、ある時、ダグラスの家に届いた手紙に兄の物があり、そこには兄がある女性と結婚した事や
子供が生まれた事、そして自分がエデン帝国を脱退したのはお前のせいではないと書き記した物を
手に取り、それまで悩んでいた兄に対する後悔から救われる事となります。
またここで、彼はディゼルの存在を知り、手紙にはもし自分や妻の身に何かあり
息子が一人となった際にはよろしく頼むと書いてありました。
それから数年の後に、兄の故郷が火災にあったと聞いた彼は即座にそこに駆けつけ倒れていた
兄の面影をもつ少年ディゼルを拾い上げ、彼を自分の家に引き取る事となったのです。
ちなみ、もう本編をご覧になった皆様には見当がついていると思いますが
ダグラスさんの正体こそ、未来の八王のリーダー“雷統の王”シュヴァルストさんでした(笑)

そして最後に余談ながらヴェルトハイムが語った世界の創世。
いわゆる“理(ロゴス)”の定義について。
これについては実はこのエスペランサー無印の遥か先の世界観
エスペランサーセイバーに関わる設定だったりします。
現在のエスペランサーの世界を生み出し支えている存在エルドラシルについても
深く関わる部分なのですが、もしも本編中、あのままヴェルトハイムがディゼルに倒される事なく
己の理に到達し、彼が望む新世界の創世を行われておりましたら
まさに歴史は大きく変わっていたことでしょう(笑)
ちなみにヴェルトハイムが到達していたであろう理は
世界創生を可能とする第三階位の理“混沌”でした。

結構長々と眠りの皇帝の裏話について語ってしまいましたが…。
(これでは後書きと言うより裏話ですね)
そろそろ、この辺にて後書きの幕も下ろそうと思います。

最後に、真の眠りの皇帝となり“この世の白”ヴァイスの片腕となったディゼルですが
彼のその後は何かしらの形として決着を迎えさせたいと思います。
少なくともアリスとの絡みを迎えての決着を(笑)

それではまたいつか、次なるリプレイ掲載の時にお会いできるよう――。



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