第1章 孤独なる少年

薄暗い漆黒の森の中。
物語はここからはじまる―――。

一人の剣士が返りに血に染まった身体のままその森を歩いていた。
抜き身の真紅の剣についた血がその前に起こった残酷な物語を語っていた。

そんな青年の後ろを一人の少女が後を付けていた。
手足にかけられた鎖は少女が奴隷階級である事を表していた。
少女は鎖に足にからませながらも剣士の後を追う。
やがて青年は振り返り一言を放つ。

「…いつまでついて来る気だ」

青年のそんな問いかけに少女は少し怯えるが、すぐに青年の方を見て答える。

「えっと、その…。お礼を…したいから!」

「…礼?」

「はい!だって、私のことをあの野盗さん達から助けてくれたから!」

そんな屈託無い少女の声に青年は顔を背ける。

「お前を助けたわけじゃない。オレは…」

身を翻し剣士は再び歩みを始める。

「死に場所を求めていただけだ」

「死に…場所?」

青年が呟いたその言葉に少女は聞き返す。

「オレは死ななければいけない人間だ。だからオレはオレを殺してくれる奴を探している…。
ただそれだけだ」

「そんなのだめです!!」

森の中に広がる少女の声。

「………」

少女の強い叫びに歩みを止める青年。

「そんな悲しい事を言わないで下さい…。死ぬために生きるなんておかしいです」

「………」

しばらく黙り込む両者であったが意を決したように少女が青年へと近づく。

「――決めました!私、あなたと一緒にいきます!
そして、あなたに生きる意味を与えます!
それが、私のあなたへの――お礼です」

漆黒の森の中にしばしの沈黙が訪れる。
やがて青年は静かに口を開く。

「お前……名前は?」

「ありません」

笑顔を浮かべ少女は答えた。

「あなたが付けてくれると…うれしいです」

「ふんっ…」

再び身を翻し歩き始める青年。
その青年の後を追うように少女もまた歩き始める。
やがて青年は少女へ一言を返す。

「…考えて…おいてやるよ。」




エスペランサー・リプレイ
<死の後継者>

―――それは人の絆が織り成す、優しい物語。



GM:ではまずプレイヤー1のイオス君のOPですけど、幼少の頃からいきます〜。

イオス:はーい。


●PC1オープニング・シーン1 〜孤独なる少年〜
ベスター地方。北の大陸フォブリアに存在する大国テラストに隣接するその場所。
そこを治めているのはこの大陸で最も恐れられ認められている者。
“完全なる男”レオ―ド=フォン=ヴァルムオンド。
わずか一世代で領主としての地位を獲得し、その能力・人望・影響力によって
今や近隣諸国だけでなく大陸に存在する大国にすら認められている存在。
彼のこれからの行動によってこの大陸の未来は多く変わるであろう、とさえ囁かれていた。
この大陸に存在する多くの者が知るこの“完全なる男”
だがしかし、この“完全なる男”の影に存在する少年の事は誰一人として知らず認知していなかった。
少年の名は――イオス=ヴァルムオンド。
“完全なる男”レオード=フォン=ヴァルムオンドの実の息子。
この日、いつもと変わらない平穏な日々。誰一人として知らずにいた。
“完全なる男”の影として生まれた子がこの大陸でおこる災厄を防ぐ英雄となる未来を――
ただ知らずに暮らしていた。

GM:イオス君。君はフォブリア大陸の一地方、ベスター地方を治める公爵の一人息子として生まれた。
しかし、君にとっての問題はそんな事ではなかった。
君の父。“完全なる男”という異名を持つレオ―ド=フォン=ヴァルムオンド。
彼の存在そのものが君にとって全ての障害そのものだった。
誰も、父すらも君と言う存在を見ずに君は父の影のような存在として生きてきた。
そんな日々が続いた14歳のある時、君に一つの転機が訪れた。

イオス:14歳というと本編では19歳ですから5年前ですな。

GM:ですね(笑)
それで転機についてですが、屋敷で暮らしていた君は半年程前に世界有数の難校と言われる
『銀の学院』への入国試験を受けたのですがこれが何と主席合格で!
学園長直々の推薦状まで貰ったほどなのです(笑)

イオス:おお、さすがだ。

GM:と言うわけで現在、貴方の手元にその銀色の手紙が届いたところですね。
「すごいですね!イオス様!」
とそう君が持つ手紙を覗きながら言うのは君のメイドを務めているライカンブリードの少女
セクエンツィア。この屋敷において君に対して公平に接してくれる
君が心を許せる数少ない人物の一人だ。
セクエンツィア
イオス:「ああ、だが本当に気を引き締めなければならないのはこれからだ。
何せこれから会う奴らは全員がこの『銀の学院』に入学した奴らなのだからな。
“奴”を超えるならば、この学院でトップをとるくらいは容易くできなければならない」
合格の喜びのために握っていた拳が、別の感情によってさらに強く握られる。

GM:「イオス様…」
彼女は少し、君を心配そうに見つめている。
「でも!この通知にはこの1年でトップの入試資格と書いてありますし!
きっとお父上もお認めになりますよ!」

イオス:「……そうだといいがな」
その声にはどこか諦めたふうな感じがうかがえる。

GM(???):「はっはっはっ。相変わらず、暗い雰囲気だなー、お前は!」
そう言って君の後ろから肩を叩いて現れる人物。
つい、2年くらいまえにこの屋敷に使用人として雇われたイクフォードという男だね。
彼もまたこの屋敷で君に対して分け隔てなく接してくれる数少ない人物の一人だ。

イオス:「お前が楽天的すぎるだけだ。人事だと思いおって」

GM(イクフォード):「ははは。確かになー!まあでも折角だしよ!
お前の父親に報告くらいしようぜ!セクエンツィアちゃん、こいつちょっと借りるな〜!」

イオス:「なっ?!何を勝手に――!」

GM:そう言ってイクフォードはきょとんとしているセクエンツィアを横目に
無理やり君の手をとって走り出すね(笑)
「まあまあ。お前、もしかして忘れたのかよ?」

イオス:「何をだ」

GM(イクフォード):「今日はお前の誕生日だろ」ウインク一つ。
「しかも、お前の銀の学院入りが決まったんだ。
いくら、あの人でもお前に対して何かお祝いの言葉の一つでもくれるかもしれないぜ〜」

イオス:「…仕方ない。どうせ何らかの形で報告はせねばならんのだ」
と半ば自分に言い聞かせるように言う。

GM:そう言っている間に目の前には父親の私室のドアが。
「じゃ、報告してこいよ。」と明るい口調でイクフォードが。

イオス:一瞬躊躇い、それからコンコンとノックし、「イオスです」と言う。

GM:「……入れ」冷たい氷のような声がドアの奥から響く。

イオス:ではゆっくりと扉を開けて入る。

GM:中に入るとそこには君の父が何かの書類を片手にして立っている姿があった。
おぞましいほどに整った姿とそこから放たれる人を寄せ付けない冷たい気配は
何度、見ても背筋が凍る感触を味わう。
「何のようだ」 君のほうを見ずに一言。

イオス:その気に気圧されそうになるが、それを跳ね除け、バッと合格証明書を突き出す。
「合格したぞ、世界最高峰・最難関の『銀の学院』。紛れも無いトップでだ」

GM(レオード):「そうか」
相変わらず、君のほうを見ずに父はその一言を。しばしの沈黙の後に
「用が終わったのなら、出て行け。仕事の邪魔だ」と。

イオス:では部屋を出ようと踵をかえしたときにぽつりと
「今日は何の日だったか覚えているか?」と呟く。

GM:ではそんな君の呟きに気づいたのか、気づいていないのか父レオードは手に持った書類にのみ
視線を向け、反応の一つもしない。
そうして、そんな父を横目に君は部屋を出て行く。

イオス:(そうだな、今日は何の日でもないさ。お前にとってはな…)

GM:部屋の外ではイクフォードが気まずそうに待っていた。「あ〜…その、何だ」

フィリア:マジで仕事にしか興味ないな……。

イオス:「安心したよ。奴はレオード=フォン=ヴァルムオンドだ」
そう言うとイクフォードに背を向けて歩き出す。

GM:そんな君を見ながらイクフォードがぽつりと。

「そうだな。…けどそれでもあの人はお前の父親なんだよ…」

◆   ◆   ◆

GM:と言うわけで報告を終えた君は自室の扉の前まで帰ってくる。

イオス:奴の部屋と違って自室の扉は特に躊躇いも無く気軽に開け
「待たせたな、セクエンツィア」と。

GM(セクエンツィア):「はい!お誕生日おめでとうございます!イオス様!」
そう言って君を出迎えたのはセクエンツィアだった。
君の部屋の中はパーティの装飾とかケーキの準備が出来ている。

イオス:それは一瞬固まるぞ。

フィリア:仕事はえぇ。

GM(セクエンツィア):「これ、自信作なんです。お口に合うかどうか分かりませんけど…」
とちょっと顔を赤らめて。

イオス:「揃いも揃ってもの好きな…」
と言いつつ嫌な顔はしていない。

GM:「…?どうかしたんですか」

イオス:「いや、何でもない。そうだな、今日は記念日だ。俺たちにとってはな」

GM(セクエンツィア):「はい!そうですよ!」
そう言ってセクエンツィアは君に笑顔を向ける。

イオス:(きっと俺はこの日を生涯忘れない…)

口元に笑みをうかべ、イオスは部屋の奥へと入る。
しばしの後に、打ち合わせていたかのようにイクフォードもまた入り
三人は夜が更けるまで部屋で祝いの語らいをしていた。
その日の誕生日はイオスに取って忘れられない想い出の一つとなった。

「しかしこのケーキの量…食べきれるのか…?」

そんなイオスの呟きにちょっと汗を浮かべてセクエンツィアとイクフォードは笑った。

●PC1オープニング・シーン1終了

イオス:緊張したぁ…。

GM:いやー!イオス君、かっこいいいじゃないですか!(笑)

イオス:そう言ってもらえると嬉しいです。セリフはかなり気を使いました。

GM:これは今後の展開が楽しみになってきますね〜(笑)
じゃあ次はPC2のフィリアさん、行ってみましょう。

フィリア:はいな

●PC2オープニング・シーン1 〜真紅の痛み〜

「―――フィリア!!」

そう叫んだのはフィリアの父だった。
そうして父の身体がフィリアの身を包み次に感じた感触は――自分の肉が切り裂かれる感触。

フィリア:「とぉ、さま……?」
何が起きたのか理解できていない。

GM:目の前で君の父の身体は二つに引き裂かれていく
それだけでなく、君は顔や体中に熱い痛みが走るのが分かる。
気づいた時には君は血塗れの床に倒れていた。目の前にあるのはただ赤の一色。

フィリア:痛みは……ある。けど、それ以上に熱い。
体が、顔が、背が……感じる何もかもが熱い!!
「あ、う、あぐぅぁぁ」

GM:父が綺麗だと言った自分の羽が地べたに転がっている。

フィリア:「はねぇ、わた、しの……ぐぅぅぅッ!」
羽に手を伸ばそうとするけど体が言う事を聞かない。激痛と熱が体中を駆け巡る。

GM:そんな君を見下ろすように一人の…おそらく15,6の少年だろうが立っている。

フィリア:見えない。血海に彼が足を踏み入れたのだろうか?
水音がする。顔を水音がなった方に向けようと……
「ぐぅぁあッ!!」 背が火傷しそうに熱い。体を動かすことが出来ない!

GM:薄れゆく意識のなかぼんやりと見る。
その男の血よりも紅い真紅の髪とその右腕から生えたような真紅の剣を。

フィリア:「わ…れなぃ」 
口が上手く動かない。「わす、れない」

GM:その真紅の少年は踵を返し、君の前から姿を消した―――。

フィリア:それでも……痛みに耐えながら口にする。憎しみの呪詛を。
「おまぇ、わすれない!!」

GM:やがて君は意識を無くした。

フィリア:なにも見えない。なにも聞こえない。
感じるのは痛みと熱と、血の味だけだ。それすらも、薄れていく。

そうして少女・フィリア=クーへの血の記憶はそこで途絶えた―――。

GM:そうして、次に目を覚ました時、そこは最後に見た景色とは全く変わっていたね。
美しい装飾の施された部屋の中央の大きなベットで君は目を覚ます。
見ると体中に包帯や応急手当が施されている。

フィリア:あ、普通に繋がった……夢での回想かなとか思った。
「……高い?」
見ているのは上だけ。周りは見ない。
そして、気付くよ。普段、感じることが出来ないはずの、背中のシーツの感触を。
羽があるため、ベッドにこんなふうに横たわることができない……はず、なのに。

GM:そう。普段なら感じないはずの感触だね。

フィリア:背はベッドの感触を伝える。「…………ッ!」
すこし考えて、気付くよ。はね起き……ようとしても出来ない。激痛が体中を駆け巡る。
激痛で目を瞑り、またある事に気付く。視界が、右目の視界が無い。

GM:右目までも(笑)

フィリア:顔を切られたんですよ。失明はしていない……と思う。包帯巻いてるから見えないの。

GM:ああ、なるほど。ではそんな風に君が自分の体調の異変に気づいた頃。
「気づいたか」
不意に部屋の扉からそんな声が響き、中に金髪長身の男が入ってくる。

フィリア:その声は聞こえていた。でも、声の主を見ようとしないよ。

GM:ではそんな君の様子を見て男は納得したように呟く。
「…どうやら自分の置かれた状況が今ひとつ飲み込めてない様子だな。まぁ無理もないか」
男はそう言って君の方に近づいてくるなの〜。

フィリア:……よし。

GM:よし?(笑)

フィリア:「とぉさまッ!?」
声にそこで反応すると。父の声に似ていたから。
でも急に首を動かしたから激痛が。痛みに耐えかねて目を閉じてしまう。

GM:がばっと抱きつかれたまま男は静かに立っている。しばらくして男がゆっくりと口を開く。
「…気は済んだか?」

フィリア:「……とぉさま、じゃない……。ごめん、なさい」
彼を解放するよ。そして正面から彼の顔を見る。

GM(金髪の男):「分かればそれでいい」
男の格好を見ると、かなりの貴族階級を示すような豪華な服を着ているのが分かる。
それだけじゃなく彼の持つオーラも普通の人とは違うものを感じさせる。

フィリア:ほぅ。無言で彼の顔を見る。それだけ。

GM(金髪の男):「何が会ったのかは聞く事はしない。察しはつく」君を見据えて男は言葉を続ける。
「お前の父がなぜ死んだか、教えてやろうか?」

フィリア:迷いはしない。
「教えて」 顔には何も表情を浮かべない。

GM(金髪の男):「弱いからだ」 ハッキリとその一言を。

フィリア:「だから殺された?」

GM(金髪の男):「お前の父に力があれば、殺される事も娘を
このように傷つけられる事もなかったはずだ。自分の身すら守れない奴は何一つ守れはしない」

フィリア:「……じゃあ」
瞬きを二、三回。「私が強くなったら、あいつころせる?」

GM(金髪の男):「ああ。お前には素質がある」
君の瞳を真っ直ぐ見据えて男は断言する。

フィリア:「あなた、つよい?」

GM(金髪の男):「ああ、そのつもりだ」

フィリア:「ひとつ、おねがいしてもいい?」

GM(金髪の男):「何だ?」

フィリア:「わたしをつよくして。なんでもするから」

GM(金髪の男):「いいだろう。それでこそ、私が救った価値のある命だ」
言って男は顔にかかる髪を払い、自分の名を告げる。
「私の名はシュヴァルストだ。お前の名は?」
シュヴァルスト
フィリア:「フィリア・クーヘ。それが私の名前。とぉさまが付けてくれたの」
表情は変えないよ。無表情のまま。

GM(シュヴァルスト):「なるほど、フィリアか。いいだろう、フィリア。
これからお前は私の剣となり力をつけろ。その先にお前の望むものがある」

フィリア:「ほんとうに?」 微笑むよ。

GM(シュヴァルスト):「私は嘘は嫌いだ」
こちらも微笑み返す。

フィリア:「ありがとう。わたし、あなたの剣になる。だから、あいつをころせる力をちょうだい」

GM(シュヴァルスト):「殺すために求める力、か。まあ、それも一つの道だな」
そう言って彼は納得するように頷く。
「その才能、存分に私の下で発揮せよ。フィリア」

「うん!」

その日、エデン帝国参謀にしてエデン最高司令官八王の統治者・シュヴァルストに拾われた
一人の少女の運命は大きく動いた。
全ては家族と自分の幸せを奪った真紅の人物に復讐をするために。
そうして数年の月日が流れる事となる――――。


 
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