◆PC2オープニング 〜想い出の夢・18年前〜
GM:夜、ニーブルレイ山脈を眼前にした砂漠地帯にて 君とディゼル、サクス、アリスの四人は野営をしていた。 すでに公国を経ってから数日。目的の山脈も見え、その先にあるのは君達が目指す アヴェスター教会の総本山。その前に一時の休憩を取るべく野営をしている。そんなシーンからです。 アルジェン:はーい。 GM:君は夜中の見張りとして焚き火の近くで待機をしていた。 もうじき、あの忌まわしきアヴェスター教会の総本山へ辿り着き、シアリー陛下の安否も判明する。 だが、その思いとは別に君にはもう一つ気に掛かっている事があった。 それはあのジグードが君の力を見て“まるでそれを知っている”かのように恐れたあの言動。 自分の過去への扉。それが今、自分に近づきつつあるのでは、と。 アルジェント:(レストも言っていた。過去が知りたければ来いと…。 あいつらは、アヴェスター教会は、俺の何を知っているというんだ…) GM:そんな風に考えていた君に一人の男が声を掛けてきた。 声の主はサクス、見張りの交代の時間だ。 アルジェント:ばっと気配を感じて振り向く。 「なんだ、お前か」 サクス:「若い者は寝る時間だ、後は任せておけ」 アルジェント:「そうだな、眠るとしよう…」 GM:いつの頃か、共にアヴェスター教会と戦う事となった今のこのパーティ。 ずっと一人だったアルジェントにとってこの経験はもしかしたら始めての事だったのかもしれない。 アルジェント:「星を、見ていた…」 ぽつりと呟く。 サクス:「ほう、見た目に寄らず風情な事を言うな」 アルジェント:「夜空に輝く星を見ていたら、何か思い出せそうな感じがしたんだ…。 結局、何も思い出せなかったがな」 サクス:「ほう、理屈深い奴だと思っていたが、意外と人間味もあるのだな。 俺は嬉しい、お前がこうして自分自身の弱みも見せてくれるようになってな」 アルジェント:「たまに、考えることがある。過去の自分は弱かったのだろうか、 それとも強かったのだろうか。そして今の俺は、強くなったのだろうか、弱くなったのだろうか…と」 サクス:「ふっ、当然武芸の腕は上がっていて当然ではあるが… 人間としての部分はそうはいかない、か」 アルジェント:「俺が自分の記憶を取り戻したとき、過去の俺が今の俺より強ければ 今の俺は塗りつぶされ、今の俺が過去の俺より強ければ過去の俺は否定される。 過去の俺か今の俺のどちらか強い方が生き残る。 どちらにしても、“俺”は消える…。こう考えること自体、弱いのかもしれないな…」 GM:アルがかっこいい(笑) アルジェント:ありがとうございます。これ、二章用に温めてたセリフの一つ。 「これもまた、対価なのだろう。俺は自分の記憶を取り戻したとき、 必ずその対価を払わなければいけない」 サクス:「人も獣だ。強い者を慕い、弱き者に慈悲を傾ける。 個として完全ではいられない者だからこそ、こうして共存する事が出来る」 と、慣れた手つきで暖めたマグカップに湯を注ぎます。 アルジェント:(俺は、共存するにはあまりにも不完全すぎるのかもしれないな…) そう思ったが、声には出さない。 サクス:「少なくとも俺にとってはお前が過去のお前であろうと現在のお前であろうと分からない。 その点ではどこか寂しい事ではあるが、お前には変わりない」 アルジェント:「そうか…」 そう言ってテントの方へ歩く 「もう寝よう。今日は考え事が多すぎた…」 サクス:「…人の域を超えれば、その寂しさは紛れるのだろうか、な……」 GM:サクスが漏らした最後の呟き。 それを背にアルジェントは静かにテントの中に入り、眠りに入る――。 そして、君は夢を見た。 GM:もう何年も見た事が無い、夢。 そこで君は母と弟と三人で一緒にいた。 ただの夢なのか。それとも過去の出来事を見ているのか。それは分からない。 だが、そこは城の中庭だった。 アルジェント:うおっと、城なのか。 GM:美しい彫刻が施された城。その中庭の構造も完璧と言っていいほど美しく構成されていた。 そんな中庭で君は静かにあやとりをしていた。 アルジェント:「えっと、こっちがこうで…これをこうして…できた!」 GM:そんな風にあやとりを完成させていた君を見ていた弟が君に近づき…そのあやとりの紐を取る。 アルジェント:「あっ」 GM(弟):「兄ちゃんっていっつもあやとりばっかり〜!たまには一緒にボール遊びしようよ〜!」 そう言ってあやとりの紐を持ったまま走っていく君の弟。 アルジェント:「返してよ〜!」 そう言って追いかける。 GM(弟):「あははは〜!『泣き虫』のアル兄ちゃん〜!ここまでおいで〜!」 からかうように君から逃げていく弟。 アルジェント:「泣き虫って言うな〜!」 そう言いながら追いかけるけど、足は弟の方が速い。 GM:笑いながら走っていた君の弟。だが不意に君の前を走っていた弟は目の前の人物にどんっと ぶつかり、手に持ったあやとりを取られる。 「こーら、駄目でしょう。お兄ちゃんの物を勝手に取ったら」 アルジェント:「あ、お母さん」 GM:そう言って弟を軽く叱咤して母親は君の前まで来て、手に持ったあやとりを君に手渡す。 アルジェント:「お母さん、ありがとう」 GM(母親):「ふふっ、どう致しまして」 君の言葉を受け取って母親は優しい笑みを浮かべる。 それを見て、隣にいた弟がぷ〜っと頬を膨らませる。 「もぅ!お母さんは兄ちゃんに甘いよ〜!」 アルジェント:「人の物を勝手に取るからだよ〜。 盗んだ物はその人の物じゃないから、また誰かに盗まれちゃうんだよ!そう絵本に書いてあったもん」 GM(母親):「あらあら。アルはもうその歳で本に書いてある事の意味を理解しているのね。 お母さん鼻が高いわ」 そう言って、母は君の頭を優しく撫でてくれる。 アルジェント:「うん、僕、絵本好きだもん!僕ね、絵本に書いてあるような強い騎士になるんだ!」 GM(母親):「強い騎士さん…。うん、そうね。アルジェント。貴方ならなれるわ」 そう言って母は君と同じ目線に姿勢を持ってくる。 アルジェント:「うん、僕強い騎士になって絵本みたいに悪い奴からお姫様を救いだすんだ」 GM(母親):「ええ、そうね。今はちょっと内気だけど 将来の貴方はきっと強い人になっているはずだからね」 そう言って母は君の手を握る。 「アルジェント。これだけは覚えておいて。 将来、貴方が辛い運命に巻き込まれたとしても…きっと大丈夫」 アルジェント:「お母さん…?」 何かいつもと少し様子が違うなぁと思うが、それだけ。 GM(母親):「貴方ならきっと“私が背負った運命”を切り開く力がある。そう信じてるわ」 アルジェント:「うん…わかったよ」 GM:母は君を信じるように包み込むように、その優しい笑みを浮かべていた。 「アルジェント…、あなたの空に輝きがありますように」 そっと君の手を握ったまま母親は祈るように呟いた。 アルジェント:アルジェントはそのままじっと母を見つめていよう。 GM(母親):「暗き夜道でも沢山の星で照らされるように、 あなたの進む道に多くの人の祝福がありますようにという意味よ。 もしも、貴方が道に迷ってしまったら、星を見て今日の事を思い返して。 そうすればきっと…大丈夫だから」 アルジェント:「うん、わかった。僕、忘れないよ」 GM:君のその返答に対し、優しく手を握り返す母。 その温もりが伝わるように、この言葉が鮮明に君の中で何度も木霊する。 そして、君の手と母の手が離れた瞬間、不意にこの場に誰かの声が聞こえる。 アルジェント:おおっと。 GM(???):「へぇ〜、驚いたなぁ…。貴方に子供がいたなんて」 それは涼やかな少女の声。その声に反応するように君の母がある一点をばっと見る。 アルジェント:「誰…?」 GM:見ると中庭の入り口から君達を覗くように一人の銀色の髪の少女がいた。 「…ここへ入って来ていい許可は出していないわよ。シュトルム」 シュトルムと呼ばれた少女はなにやら愉快そうな笑みを浮かべ返す。 「いいじゃない、別に〜。誰にも言う気はないよ」 アルジェント:げっ、あはははさんじゃないか。 GM:そう言ってシュトルムと呼ばれた少女は君達の方へ近づき…アルジェント、君の眼前まで来る。 アルジェント:「だぁれ…?」 GM(シュトルム):「…へぇ〜…」 君は目の前の少女を見た瞬間。知らず知らずに震えが来ている事に気づく。 目の前の少女の危険性に君の本能が鐘を鳴らしている。 アルジェント:(この人…怖い…) ゆっくりと後ずさる。 GM(シュトルム):「ふふふっ、君…いいね、すごく可愛いよ…。 あぁ…大人になったらすっごく私好みになりそう…」 そう言って少女はそっと君の頬を撫でるように指を這わせる。 アルジェント:いらんフラグが立った! 「ぁ…ぅゎ…」 GM:しかし、それを見ていた君の母がそのシュトルムの手をぱしっと払う。 「消えなさい。二度とここには近づかないで。シュトルム」 アルジェント:「お母さん…」 GM(シュトルム):「…はいはい。残念だな〜。もう少しお話ししたかったんだけど。 それじゃあ、またね。“アルジェント”君、ふふっ♪」 凍えるような笑みを浮かべてシュトルムと呼ばれた少女は静かにその場を後にした。 アルジェント:では彼女が去った後、ぺたんとその場に座り込む。 GM(母親):「…アル、大丈夫?」 「お、お兄ちゃん…」 母も弟も君を心配するように声を掛けてくる。 アルジェント:「う…うん…。だけど、あの人怖かった…」 GM(母親):「そうね…。でも、もう大丈夫よ。お母さんがもう二度と 彼女をここへと来させないようにするから」 強い意志を秘めた瞳で君の母親は君へそう言った。 アルジェント:「うん…」 まだ恐怖が残っているのか、頷くことしかできない。 GM:「お兄ちゃん……」 君の弟もまた、君と同じように恐怖を感じたのかただ震えながら君と母親を見ていた。 そして景色は暗転する。 GM:次に君が見た景色は――紅蓮の景色。 それは君と家族が住んでいた城が燃える景色だった。 アルジェント:「ぁ…ぅぁ…」 GM:あれからわずか数週間の月日しか流れていないにも関わらず 何の前触れもなく君の住んでいた場所が紅蓮に包まれている。 そして、その燃える城の通路を君は弟と一緒に走っていた。 「お兄ちゃん!こっちだよ!お、お母さんさえ見つかれば大丈夫だから!」 アルジェント:「う…うん…!」 相変わらず弟より足が遅いアルジェント。 GM:震える身体を必死に抑えながら君の弟は励ますようにそう言う。 弟に先導されながら城の奥を走る君。 そして、遂に君達は見つけた。通路の奥、その先にいる母親の姿を。 アルジェント:「お母さん!」 GM(弟):「お母さんー!!」 君と弟は共に駆け出すが、元々体力的に弟に劣る君は必然、弟との距離はひらいていく。 そして、君達の声に気づき振り返った母親は叫びを上げた。 「ッ!だ、だめ!!こっちに来ちゃだめ――ッ!!!」 アルジェント:「えっ…?」 GM(弟):「…え?」 君達二人がそんな呆けた声を出した瞬間だった。 “ごおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉッ!!!” アルジェント、君の目の前を走っていた弟が突如壁から噴きだした炎に飲まれた。 「あああああああああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁぁっ!!!!!」 アルジェント:「―――――!!」 弟の名前を叫ぶ。 GM:炎に飲み込まれ、絶叫を上げる君の弟。炎の中で弟の影が躍る。 君が弟の名を叫んだ瞬間、異音が君の足元から聞こえた。 “ご……がごおおおおおおおおおおおおんっ!!!” それは足元が崩れる音。それを理解するより早く、君の足元の床は砕け散った。 アルジェント:「うわああぁぁぁ!!」 GM:暗闇に飲み込まれていく君。 それはとてもとても長い時間にも一瞬の時間にも感じられた。 アルジェント:「お母さん!!―――――!!」 叫ぶ、届くかもわからず、届いたとしてもどうにもならないというのに。 GM:君が残した最後の絶叫。 それは暗闇の中で木霊し、遥か先へ響き渡った。 だが、その後の結末を君は知らない。そう君の意識はそこで終わっていたから。 幼少アルジェントの記憶は。 そうして、“記憶を失った第二のアルジェント”の人生がその後、始まる事となった。 ◆PC2オープニング終了 アルジェント:何か長々とやっちゃってごめんね! GM:いやぁ、こっちこそ堪能しちゃったよ!ありがとう!(笑) サクス:まさかアルが引きこもりっ子だったなんて…。 アルジェント:ふっふっふ、意外だっただろう。当初から考えていた設定です。 GM:では、次はお待たせ、サクスさんです〜! ◆PC3オープニング 〜想い出の記憶・20年前〜 GM:先程のシーンから続けて行きます。 君と交代したアルジェントがテントに入り、見張りは君だけとなった所です。 サクス:はーい(笑) GM:燃える焚き火を見ながら君は自分が受けた“任務”を思い返す。 ここまでその任務は順調に行っており、もう間もなくその任務も完遂出来るだろう。 君が任務をこなすのは全ては君の“主”への忠節の為。 そして、思い出す。君と“主”との始めての出会いを。 GM:20年前、君はある小国の騎士団に入団していた。 君は生まれつきある“禍々しい力”を持っていた。 その力の為に、君の周りには君と並び立つ者がいなかった。 『呪い』まさにそう言っていい程の力。 それは騎士団に入ってからも同じで、同じ騎士達は君を恐れ、陰では「化け物」として疎外していた。 君という存在は敵以上の脅威として騎士団達に恐れられた。 だからこそ、君に騎士団長は任務を与えた。 「この大陸を支配する魔族の王を打ち倒せ」 GM:そんな無茶苦茶な任務を。 サクス:これはひどい(笑) GM:騎士団達の目的はハッキリとしていた。任務にかこつけて君を抹殺する事だ。 予想通り、任務の最中に君は何度か暗殺者に襲われもしたが… 悲しい事に、そんな程度で抹殺されるほど、君の『呪い』はヤワでは無かった。 そして、気づいた時――。 サクスは、この大陸を支配している魔族の前にいた。 GM:女性だった。黒く美しい髪を足元まで靡かせるその女性は 魔族というよりも女神と呼んでいい、そんな美しい存在だった。 「こんにちわ、剣客さん」 女性は君を見て、軽く笑みを浮かべて挨拶をした。 サクス:「…分かっているのだろう?俺が何故ここにいて、これから何をしようとしているのかを」 GM(女性):「ええ、大体は。私を殺すように言われてきたんでしょう」 にっこりと、笑みを浮かべて女性は言う。 サクス:「それなら話は早い。悪いが、これも仕事でな」 何の臆面もなく、刀を抜きます。構えもせず、殺意も込めず。 GM(女性):「…でもちょっぴり残念ね。貴方はもう少し“騎士”という存在に 相応しい精神を持った人だと思ったんだけど」 刀を抜いた君を見ながら、俯いて女性は言った。 サクス:「…何故怯えない?逃げようとしない? この剛刀を見れば、自分がこれからどうなるか想像がつかないはずはないと思うが」 GM(女性):「ん、そうね。勿論私も死ぬのは怖いけど、貴方に対して怖いと言う感情は持たないわ。 貴方はただ命令を受けて私を殺しにやってきた自分を持っていない人だから。 そういう自分を持たない人には私は負ける気はしないから」 ひるむことなく、君の瞳を真っ直ぐ見て女性は凛として言い切った。 サクス:「ほう、ま、違いない。どこの世も異端は挫かれるものだ。 そうしなければ、国としての体裁がとれないからな」 GM(女性):「まぁ、確かにそうね」そう一拍置いて後、女性は言う。 「それじゃあ、試しに私を斬ってみたら?」 サクス:「肝の据わった女だ。いいか、もう一度言おう。逃げようとしろ、いいな」 GM(女性):「あら。案外、紳士なのね。少し好感度がアップしたかも」 微笑みながらも女性は続ける。 サクス:「いいか、俺は剣客だ、女子どもは斬らん。だがな、これは仕事なんだ。 いいか、お前がここに留まっている以上は…斬るも已む無し、だ。分かるな?」 GM:そう言う君に対し女性はどこか君の心の内を見抜くように語り掛ける。 「…貴方は自分自身を異端として認めている。それは自分の力が他とあまりに違いすぎるから。 違うかしら?」 サクス:「…ああ、誰も彼も分かっていて、それでいて口に出さない。 俺が戦う事それ自体が弱い者いじめなんだよ、悲しいことにな」 GM(女性):「やっぱりね。だったら貴方の気持ち、私なら分かるかもしれないわ。 貴方の中にある自身の力への疑問。その答えを教えてあげるわ。 だから、そのためにもまずは…貴方の言うその任務をこなしてみせなさい。 さぁ、私を斬ってみなさい」 サクス:「…ほう?俺からこれ以上誇りを奪うというのか。 …まあいい、俺も些か疲れたところだ。軽く腕でも折られてしばらく隠遁生活を送っていろ」 無造作に右腕を上げて女目掛けて斬りつけます。技もなにもない、ただの腕の一振り。 常人なら真っ二つになる程度の威力を秘めた一撃。 GM:君が放った渾身の一撃。君にとってその結果は見るまでもなく分かりきっていた。 そのはずだった。だが、君の刃は女性には届かなかった。 女性の持つ漆黒の髪。そう、ただの髪。それが君の刃を受け止めていた。 悪戯っぽい笑みを浮かべて女性は言う。 「はい、残念〜。それじゃあ、私は倒せないわよ」 サクス:「あ?」 訝しげに切っ先を確認して、実に不思議そうな顔をします。 GM(???):「確かに“力だけ”は見事だな。だが技術は素人だ」 不意に君の真横からそんな男の声が聞こえた。それと同時に――“どごんっ!!”と 君の脇腹に入る重い一撃。 それは君の生まれ持ったこの強靭すぎる身体に与えられた初めての衝撃だった。 そう、君は初めて味わうその感覚と共に己の身が吹き飛ばされた事に気づいた。 サクス:「お…ぐぁ?」 自分自身に何が起こったのか分からない顔で ぽかんとしたままの顔で吹き飛ばされ、倒れこみます。 GM(???):「お前は自分の周りに自分と並べる者が存在せずに、己を主張できずにいたようだが。 それが世界の全てと思うのならば、あまりに世界を知らなすぎるとだけ言っておこう」 サクス:「お前…何をした?なんだ?これは…この、腹の辺りがじくじくとして熱いのはなんだ? 教えてくれ、頼む」 GM:「それが“痛み”と言うやつだ。お前にとってはずっと味わいたかった感覚のはずだろう」 漆黒の制服を身に纏うその男は君以上の長身と引き締まった肉体を持っていた。 なにより感じる圧力はかつて、君が対峙してきたどの相手とも比べ物にならないほどに 心地良いものだった。 「こらー!ヴァルター!いきなりはだめでしょう!」 女性からヴァルターと呼ばれたその男は、女性に対し「…申し訳ありません」と謝罪を行う。 サクス:「…ほほう、これが痛みか、痛覚と言う奴か。 これが生きているという感覚か!はは、心地のいい感覚だ!!」 痛む腹と身体も、今の自分の立場も全く意に介せず立ち上がり 「俺の名はサクスだ、覚えておく必要もないがな!お前らの名前も聞こうか! 初めて合間見える、俺と言う存在にふさわしい相手よ!」 GM(ヴァルター):「フフッ、なるほど、その闘争こそがお前の本来の性質、 だが生まれた環境に恵まれず今までずっと燻っていたのだな。 ならば、お前とは気が合うかもしれないな。俺もまた闘争を求める武人ゆえにお前と近い存在と言える。 俺はヴァルター=オデッサイス、この御方に仕える騎士の一人だ」 サクス:「ほう、ヴァルターか。しかと覚えたぞ、俺に手傷を負わせた好敵手よ!」 GM:そして、ヴァルターの隣にいる女性、“主”と呼ばれた人物もまた君へ名を言った。 「私の名前はベアトリーチェ。名前だけで十分よね?」 サクス:「ベアトリーチェ、猛き女よ。この俺に闘争を望んだ女はお前が初めてだ。 俺は今最高に楽しい、この腕を、この身体を、存分に振るえる相手に初めて出会えた!」 GM(ベアトリーチェ):「ふふっ、じゃあ折角だし、貴方のその闘争の炎が燃え上がっているうちに 私達が存分に貴方に満足いく戦いを提供してあげるわ」 そして続くようにヴァルターもまた宣言する。 「ただし…加減ができずに殺してしまった時は、恨むなよ。サクス=一刀よ」 サクス:「いいのか?こちらこそ、あまり暴れすぎて思わずお前たちの腕をもいだり 足を砕いたりしてしまうかもしれん。ヴァルター、先程の調子で来たらあっという間に 微塵にしてしまうぞ?」 GM(ヴァルター):「それは面白い。ならば是非、やってもらおうか」 そうして、君にとって初めて、己の力を全力で出し切れる戦いが始まった。 そしてそれは同時に君にとっての生まれて初めての敗北として幕を終える。 地に倒れた君を身ながら静かに声をかけるベアトリーチェ。 「サクス。最初の言っていた貴方の力の正体。それはね『魔王の呪い』って呼ばれるものよ」 サクス:「…ほう?やはりこれは、呪いと呼ばれる物なのか」 GM(ベアトリーチェ):「ええ、そうよ。その中でも貴方が持っているものは特別な呪い。人の中で 常に絶えずに存在し、螺旋のように継承されていく呪い『螺旋の創生(スパイラル・ジェネシス)』」 サクス:「『螺旋の創生』か。まあ、それも今更構わん。 俺は存分に楽しんだ、何しろ自分の生を確認できたのだからな」 ベアトリーチェ:「…ねえ、サクス。私と一緒に来ない?」 不意に女性が君に手を差し伸べる。 サクス:「俺はお前たちの同胞を沢山殺した。今更傅く事は出来ぬ。 さあ、俺の心の臓を貫いてみせろ。お前たちにはそれが出来るはずだ」 GM(ベアトリーチェ):「あはは。そんな事しないって」 笑みを浮かべベアトリーチェは言う。 サクス:「今俺は初めて生まれを充実し、今これから死ぬ、それでいい。 俺のような異端は少しでも減った方が、世界のためにいいだろう?」 GM(ベアトリーチェ):「んー、そうね。確かに世界の取っての異端は取り除くのが 世界のためかもしれない。だったら、その異端を私が引き受けるわ。 サクス、実は私も貴方と同じ『呪い』を持ってるの。 種類はちょっと違うけどね。私達の力は確かに世界の異端。 でもだからこそ、その力を異端以外の何か昇華させたい。 そのためにもまず貴方は自分自身の力の制御を覚えなきゃいけない」 サクス:「…それは、この俺が普通の一般人のように暮らせるようになるという事か?」 GM(ベアトリーチェ):「それはこれから次第よ。それに貴方はさっき 「自分の命は好きにしていい」って言ったわよね。じゃあ、貴方の命は私が預かるわ♪ 貴方は私と一緒に来るの。いいわね?サクス」 サクス:「…ふん、だがいいのか?俺は未だ任務を帯びたままだ。 いつ寝首をかくやもしれんぞ?女であれ、十分な腕前を持っている訳だしな」 GM(ベアトリーチェ):「あはは、まぁ、その時はその時。 それに今の貴方にだったら寝首をかかれてもすかさず反撃できちゃうから。 寝首をかくなら、もう少し強くなってからがいいかもね」 サクス:「ふん、まあ少なくとも退屈はしなそうだな」 GM(ベアトリーチェ):「それじゃあ、よろしくね♪サクス」 そう言ってベアトリーチェは微笑みを浮かべ君の手を取った。 そして、その後ろにいたヴァルターもまた君の方へ近づく。 「…先ほどはベアトリーチェ様がいた故、バランスを考えればお前が負けても不思議は無かった。 いつか一対一でお前と雌雄を決したいと思う。だが、今はなんにしてもよろしく頼もう」 サクス:「ああ、よろしく頼む」 少し照れながら、手のひらを差し出します。握ると壊れてしまうが故の習性。 「…少し、気恥ずかしいな。仲間にはなるが、そっとしておいてくれ」 GM:君のその言葉に対し微笑みを浮かべるベアトリーチェと、その側近たるヴァルター。 そう、これが君と“主”と“友”との出会い――。 そして、その二人との別れがわずか2年後に来ることを…この時の君はまだ知らなかった。 |